沢【芦生】芦生研究林・一ノツボから赤崎出合まで鹿の死体数調査溯行
注:事前に「芦生研究林」の許可を受ける必要があるルート


【山 域】 芦生/京都大学芦生研究林
【日 時】 2015年5月9日(土)
【メンバー】F氏、MICKEY・矢問 
【コース】 ケヤキ坂07:45~10:00マガリ谷出合-10:30一ノツボ
      -11:40大谷出合-12:40アイノ谷出合-13:55七瀬
      -カヅラ谷出合-大ヨモギ谷出合-17:00赤崎出合~18:10須後
昨年、2014年4月26日(土)~27日(日)に1泊2日で由良川沿いのリュウキンカ
(京都府:絶滅寸前種・近畿:絶滅危惧種A/湿地開発、園芸用採取などが主要因)と
オオバ キスミレ(京都府:準絶滅危惧種・近畿:絶滅危惧種C/森林開発、土地造成、
道路工事など が減少の主要因)の分布調査をするFさんのお手伝いをしたが、今回は
鹿の死体数調査
のお手伝い。鹿も食料が減り、この冬を越せなかったものも多いという。
須後にFさんと7時15分の待ち合わせ。前日に山歩きと沢装備を車内に準備。

朝4時半に家を出て、いつもの吉野家で朝食をとる。園部辺りから弱い小雨が降り出した。

時間が有るので田歌から五波峠の様子を見に行こうと林道を登ったが、途中で斜面が
崩れていたり、峠まであと3~500mというところに大木が斜面から落ちていて、軽トラで
ギリギリの幅だったので、無理せず峠までは行かずに引き返した。気温は11℃

須後で院生のI君を乗せたFさんと合流。I君は林内設置のカメラの回収に行くらしい。
「許可車」札をつけて、Fさんの車でケヤキ坂まで行く。I君はそのままFさんの車を運転し
林内のカメラ回収へ向かい夕刻須後で合流する。
   
   
7:45
車のI君とケヤキ坂で別れ、3人は傘峠に向かい出発。MICKEYも複数回通った道だ。
雨具の上を着るがそれほどの降りではない。傾斜が緩み雨も上がり雨具を脱いだ。

途中にタヌキの貯め糞がある度に、糞の所に生えている草本類の説明をして下さる。
その周囲の草は鹿は食べないのか残っている。「ニオイを嗅いでみて下さい」とFさん。
たぬきの糞は独特のニオイがするという。「これがタヌキの糞のニオイか・・・」
タヌキの糞の周囲の草は鹿に食べられないという。このニオイと関係があるのか。
   
   
   
 2013年11月2日(土)にMICKEYと歩いた時は林道の法面はイワヒメワラビばかりに
見えたが、いまはヒメワラビがまだ芽吹き始めだした時期なのでナルコスゲなどの植物が
見られる。

2013年の11月に歩いたときに蜂の巣が落ちていた空洞の老木にもまた会えた。
チゴユリやイワカガミ、シャクナゲ等も目を楽しませてくれる。
   
   
   
ブナの雄花が沢山落ちている。今年はそろそろブナの成り年かもしれない。
「知ろう守ろう芦生の森」の植生調査をし始めたのが丁度成り年の2011年だったから
もう4年経つ。この花の量なら期待できる。
   
   
クマバチが倒木の下に潜り込んだ。この下にでも巣を作るのだろうか。

傘峠の手前でマガリ谷へと軌道修正しつつ尾根筋と斜面を下降していく。
アカショウビンの鳴き声が聞こえだした。コゲラのドラミングも始まった。
   
   
   
10:00
マガリ谷の出合付近の林床は鹿害で土のみという姿では無く緑!。
居る場所から少し離れているがテツカエデの稚樹だろうか。
沢に下りる手前でクサギの香り。MICKEYが一番嫌うニオイだ。
「あ~、ニオイがする・・・触ってしまった」とやはりMICKEYは感づいた。
バイケイソウが群生する斜面を下るとマガリ谷出合。
沢に下りてMICKEYはクサギを握ってしまった手を洗っている。
ここで沢靴に履き替える。

まずは一ノツボまで遡上し、そこからUターンするらしい。
一ノツボから灰野までが今日の鹿の死体数調査の予定とのこと。
またアカショウビンの鳴き声が聞こえる。
   
   
   
左岸をFさん、右岸を僕とMICKEYが担当して死体を探すことになった。

石の間にも骨が無いか、水中にも無いか、そして横の台地にも斜面にも無いか、視線を
サーチライトのように右へ左へと向けながら歩く。

まずは足の骨を僕が見つけた。頭蓋骨や背骨が残っているものを1体とすることになった。
これを皮切りにMICKEYが発見数する数がどんどんと増える。
かわいそうな2尖の角をもつ若い鹿の死体もあった。

MICKEYは死体があるところがわかるのか、沢筋からスーッと台地に登って行くと
「ありましたよ~!」と大きな発見声。「驚かされますね。まるで探知機だ。」とFさん。

鹿の死体発見ばかりでは気が滅入るが、その間にいろいろな草本類や木本類の花を楽しみ
つつ、名前もFさんに教えて頂きながら歩けるので、芦生の森は実に楽しい。
   
   
   
大谷出合で沢水をガバガバ飲んでいると「この上流にも鹿の死体が・・」とFさん。
「大丈夫です。沢登りでそんな目に何度もあってます。ウマイ!」と僕。
アイノ谷出合でランチタイム。滝を見ながらいろいろお話ししながら時間が過ぎる。

アラ谷の出合付近でFさんの「カモシカの死体がありましたよ~」との声。
ニホンジカだけでなくカモシカまで見つかるとは思わなかった。
カモシカが芦生の森にいるのは僕も過去に見たことがあるが、死体を見るとは・・。

水の中の見えにくいまだ肉が残っている死体もあった。
   
   
   
13:55
七瀬谷出合
釣り人が残したのだろうか、たき火の跡がある。「禁止されているのにね」とMICKEY。

まだ右岸には雪が残っている斜面がある。芦生はやはり雪深い。
「これはオオタカかな」とFさん。オオタカらしき、立派なハネと大きなツメに驚いた。
「カモシカかしら。毛が黒い」とMICKEY。「これはイノシシ」と僕。
MICKEYは鹿の死体ばかりで無く、イノシシの死体も発見できる探知機人間らしい。

ナツトウダイをルーペで観察したりしながら進む。大ヨモギ谷付近で鹿の警戒音。
   
   
   
川幅が広くなり、上流での発見のようにはもう見つからないかと思っていたら、また
MICKEYの「角もしっかり残っている牡シカ」と声。4尖の牡鹿だった。
   
   
   
   
   
赤崎出合
「もう5時なので、今日はここで終わりましょう。灰野まではまた出来るし」とFさん。
沢靴から僕はソール換え、MICKEYは軽登山靴、Fさんは長靴に履き替えた。

今日の区間での鹿の死体は12体だった。カモシカとイノシシの死体は各1体。
Fさんの鹿の死体数調査は今回で3回目とのことで、過去2回は6頭程度であったらしい。

今年は過去に比べて積雪量が少ない年だったが、鹿の過採食のために下層の植生がほとん
ど無くなり、積雪量の少ない所へと芦生の森を去った鹿もいるだろうが、この森に残り
餌が減り腹ぺこの鹿にとって今年の積雪期を乗り越えるのは極めて厳しかったのだろう。

芦生には沢山あったサルメンエビネにしても綺麗に咲いているところもあれば、鹿に食わ
れてボロボロのところや、全く無くなってしまった所もあり寂しい。

ここからは、トロッコ道をひたすら須後へと戻る。

タケヤクリの鉄製橋のところで向こうから14名のグループが来た。
僕らとすれ違うと橋の向こうでUターンして戻ってきた。

山梨から来たグループらしく、今日は山の家で泊まり、明日は上谷のガイドツアーで芦生の
森を楽しむとのこと。オサシダやアカモノなどを観察していると、Fさんはそのグループのガイド
役と化して、須後までずっと僕らより後ろで説明されていた。

先行していた数人に、「これは何ですか」と僕にも質問される。
ヒメザゼンソウやサワグルミなど、僕でもわかる物を聞かれたので良かった。

18:10
須後。カメラ回収から戻ってきていたI君が講義棟横で待っていてくれた。
MICKEYは先に駐車場へ向かったらしい。ここでFさんとI君とお別れした。

駐車場に協力金500円を入れて、いつものように河鹿荘へ向かう。
   
   
   
汗を流そうとモンベル会員割引で料金を払い、湯の方に行くとロビーで友達を
待つHさんと遭遇。明日も芦生の森らしい。しばらく楽しく歓談してお別れ。

汗を流したあとはこれまたいつものごとく「かえで御膳」を頂く。
「鹿の死体数調査をしたあとで鹿肉料理を食べるとは」とお互いに笑う。
   
   
   
まっ暗な帰路の道路沿いで、鹿3頭に出会った。生きている元気な鹿だ。

流石に今日は肌寒い。車内ヒーターを入れた。
「充実した1日だったね~」とのんびりファミマでコーヒー休憩しつつ帰ったら
22時を過ぎた。

明日もFさんは鹿の死体数調査を今日の上流部でされる。すごい体力だ。


Fさんに教えて頂いて本日出逢えた沢山の花々
【咲き始めの花】ミズタビラコ
【盛りだった花】フジ・コバノガマズミ・ミヤマガマズミ・オトコヨウゾメ
         ・ヤマツツジ・アオダモ・ウワミズザクラ・オオイワカガミ
         ・キランソウ・タニギキョウ・ツボスミレ・トキワハゼ
         ・チゴユリ 等々
【終盤だった花】カナクギノキ・ユキグニミツバツツジ・ウスギヨウラク
         ・シャクナゲ・ウリハダカエデ・オオカメノキ・オオタチツボ
          スミレ・オオタネツケバナ・ニリンソウ・キジムシロ・シャク
         ・ノミノフスマ・サワハコベ ・サルメンエビネ
 等々
その他、沢山の稚樹も教わった。すぐに忘れてしまうのだが・・・。
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