【鳥取】伯耆大山 剣ケ峰(1729m)から弥山(1709.4m)縦走


【行き先】  鳥取県・伯耆大山 剣ケ峰(1729m)から弥山(1709.4m)縦走
【日 程】  2007年8月19日(日) 前夜発・日帰り
【メンバー】 てる・矢問
【ルート】 下山駐車場−大神山神社奥宮−下宝珠越−中宝珠越−上宝珠越
        −ユートピア避難小屋−象ケ鼻−天狗ケ峰−剣ケ峰1729m
        −らくだの背−弥山1709m−夏道−下山駐車場
伯耆大山はいつも見るだけで登ったことがないと言うてるさん。大山の弥山は何度か登っ
たことがあるものの、「伯耆大山の最高峰・剣ケ峰1729m」にはまだ登ったことがない僕。
お互いの意見が一致して「最高峰・剣ケ峰登頂」を第1目標にして、らくだの背の崩壊が
なんとか行けそうな状態なら弥山までの縦走を試みる事にして、情報収集することにした。

先月28日にユートピア避難小屋まで行った丹波のたぬきさんに小屋までの登山道状況を
伺うことができた。また、今月5日に剣ケ峰に登っておられた高松のLWZさんに大野山から
無線でQSOしてユートピア小屋から剣ケ峰山頂までの崩落状況を伺えた。

第1目標を達成するためにもらくだの背の下りの状況等ではUターンする必要も考えられる。
やはり弥山側から行かずにユートピア側から行くことにした。
台風や豪雨がなかったことから今月初めとはそれほど状況が変わっていないはずだ。

家から約250km。矢問号で日付が変わる夜中1時半に下山駐車場に到着。
いろんな状況下であっても時間的な心の余裕があれば大きな力になる事を知っている二人
は早立ちを決め、テントを張って4時まで仮眠し、4時に起床し準備にかかった。

4:30
満天の星。まだ暗い。各自、念のために8mmロープを20m装備に加えた。
だるい体にウォーミングアップをかけながら出発。
登山届けポストにルートを記して投函。大山寺から大神山神社奥宮に向けて歩くが、早朝
にもかかわらず異常なくらい蒸し暑い。「てるさん、予想より早くガスがでるかもしれないな。
天気図からは風と雨は夕方まで無いはずだけど、ユートピア小屋あたりでの天候状況で
無理だけはしないでおこう」と僕。「ガスがでるとスリリングさに欠けて悲しいなぁ」とてるさん。
ジャンダルムを歩いたてるさんはスリルに麻痺してる・・・。

5:15
大神山神社の境内でうっすら明るくなった。「おお、稜線が太陽に照らされてるよ。まだガスは
出ていないな」ブナの樹林帯を進み下宝珠越と元谷との分岐を左へと進む。
林道の走る下宝珠越登山口に出た。振子山・親指ピーク方面が危険という掲示が貼ってある。

ここから蒸し暑い斜面を一歩一歩登る。しばらくぶりの登山のてるさんは「足がすぐ疲れるし、
今日は汗が異常にでるなぁ」と。「時間はあるし、体力を使い切らないようにゆっくり登ろう。
危険地帯で集中力と体力が全開できるように力配分をミスらないのが大切。ゆっくり着実に
行こう!」「はいよ〜」
ブナ林に朝日が差し込む 三鈷峰 1516m が見えだした やっと展望が開けた
「砂すべり」への入り口 滑らないように通過 三鈷峰への分岐
中宝珠越の手前くらいから三鈷峰がキレイに見えだした。丹波たぬきさんからの直近情報
の通り、稜線までは危険箇所の4箇所ほどに補助ロープが張ってあり、問題ない。

7:20
三鈷峰への分岐の稜線に出た。「てるさん、ここから10分だし行こうか」「ちょっとバテぎみ
だし、剣ケ峰優先で三鈷峰はパスしましょうよ」「了解。三鈷峰はいつでも登れる」
下を見ると三角鉄塔の下あたりに1人が登ってきているのが見える。「あの人も縦走かな」
あと少しで避難小屋 ガス包まれた避難小屋
7:30
ユートピア避難小屋。内部はとてもきれいだ。しかし、周囲は想定外の速さでとうとうガス
に包まれた・・・。小屋外の寒暖計は20度。小屋には「振子山・親指ピーク方面は崩落で
極めて危険」の注意書き。僕らが行く剣ケ峰方面の状況は、情報掲示物も無く不明。
行ってみないとわからないということか。「風が出たり雨になれば無理せず撤退しよう」

ガスに包まれながら小屋を出発。スリルを欲しているてるさんがここから先行。天狗ケ峰
までにも2箇所ほどとても狭い通過地点があったが、慎重に通過。「こんなレベルに難儀
しているようだと、らくだの背は通れないだろうね」「本当ですね。頑張りましょう!」
「(左)振子沢・野田ケ山」との分岐を右へと天狗ケ峰に向かって登っていく。
天狗ケ峰 1710m 剣ケ峰への崩壊路 足場の下はハング
8:15
天狗ケ峰。岩に1710mと記されている。ガスに包まれて先の足場の状況が読みづらい。
「ガスに包まれてるとやっぱり高度感のスリリングさに欠けますねぇ」と高さに麻痺してる
クライマーのてるさん。「怖がりの僕は、かんかん照りよりガスで涼しいし剣ケ峰までは
この方が足元に集中できて良いなぁ。山頂でガスが飛んでくれて展望が楽しめればそれ
に越したことはないし、目標達成で大満足」と僕。「あと300mほどで目標の剣ケ峰の山頂。
気を抜かずに慎重に行こう」
安山岩の崩れやすい狭い尾根道が続く。LWZさんからの情報の様に、2箇所ほど足幅ほ
どのきわめて細いところもある。

大山を構成している岩石は主に角閃石安山岩で、火山の年齢としては「解体期」に入り、
風化や侵食が進み、とりわけ北壁では冬の季節風の影響で激しい崩落がおこっているとい
う。また、南壁でも無数のガレ場や数本の大きな沢をつくっている。このために大山山頂の
標高は10年に数メートルずつ年々低くなっており、山頂の緑化運動「一木一石運動」などの
取り組みも追いつかず、大規模な崩落をはじめ自然風化に歯止めがかからない残念な状況
である・・・・・。いつまで縦走が出来る状態であるのか・・・。
大山・最高峰 剣ケ峰 1729m 白山やさぬき市の局とQSO
8:30
剣ケ峰 山頂。「てるさん、やったなぁ!大山の最高峰や!」「あ〜、うれしいなぁ!!」
山頂の慰霊碑のプレート標高は1731mとあるが、今の地形図では1729mだ。
時々ガスが飛び、日が差し、下の展望がチラッと見えるものすっきり晴れない。
このままガスが濃くなって雨になるのか、風が強まるのか・・・・「せっかく来たんだし、
時間があるのでガスの様子を見て決めましょう。矢問さん、無線で交信して時間調整しま
しょう」無線で知り合い複数をコールするも応答無し。時間が早すぎるのか・・・・。
ガスの水滴で服も濡れだした。風も少し吹いていて寒い。てるさんは長袖を着た。
「天狗ケ峰に人影がみえますよ」 ユートピアから剣ケ峰への稜線
白山からHCVさん、四国のさぬき市からはHIYさんのCQコールが聞こえた。
それらに応答しつつ40分が経過しようとしたとき、「スーッッッ」とガスが晴れだしたでは
ないか!!「天は我らに味方したぞ〜!」「うわっ、後続の人が天狗ケ峰に立っているの
が見えますよ! 来た尾根の下の切れたった斜面も見える! 迫力あるなぁ!ユートピア
小屋からのルートも、これから進む弥山への稜線も、弥山にいる人々も見え出した。
あ〜、今になると三鈷峰へ行っておけば良かった〜」と、あちらにこちらへと山頂を走り
回って写真を撮るてるさん。僕も素晴らしい展望を撮りまくった。
「来て良かったなぁ!」「大満足です〜!」
「弥山が見えた!」 弥山へいざ出発 狭いガレの下りは緊張する
9:35
風も微風。雲もガスも飛んだ。「縦走しよう。弥山まで約600m。らくだの背の浮き石の
コブを下れるかが問題だが、そこで再度考えよう」「行って、目で確かめましょう」と
てるさんがそそくさと出発。天狗ケ峰にいる人はそこから先には進んで来ない様子だ。

「てるさ〜ん、足場になる石を崩さないようにじんわり踏んで進んでよ〜」「了解〜」
いきなり足場が狭くなる。歩いてもいないところで石がコロコロと崩れる。ハングしている
地点では、てるさんが通過するのと同時にその下の石がどんどん落ちていく。僕が通過
するときには足場自体がもたずに落ちてしまうのでは・・・。重い体重も不利・・・・。
直ぐ先の細い足場をストックで確認するとガラガラ・・・。ストックの置き場も無い・・・。
コブの下り開始のてるさん コブを下りきった僕
「らくだの背のコブやなぁ。あの下りが超難関」「たよりない中途半端なロープがあるところ
ですよね」行ってみるとその支点は岩をいくつか積んだちゃちなもの。体重をかけると簡単
に崩落するようにも見える。「立ったままでバランスで下るしかないですね」と、てるさんが
下り出すと「ガラガラ〜」と一歩すすめばその度に足場とした石や周囲の石が崩れて落ちて
いく。「矢問さん、ロープが無くなったあとが怖いです・・・」「慎重に!」

なんとか下り切ったようだ。「てるさんが行った後、1歩目の足場の石が崩れて無くなったの
でめちゃ怖いよ〜・・」と必死で足を伸ばす。信用できる手の置き場がないのも辛い。
左右の切れた斜面も目に飛び込み心臓がバクバク、口はカラカラになる。崩れるなよ・・。
「落ち着け。慎重に行けば行ける。ゆっくり小幅で。」と自分に言い聞かす。
弥山まで気を抜かずに 「あと少しで弥山だな」
なんとか下りられた。その後もてるさんが進む度に足場の周囲は「コロコロ、ガラガラ」
と音を立てている。その崩れ具合を見ながら後ろから行くのも、ロシアンルーレット状態
のようで実に不気味・・・。「落ちたら止まりませんね・・・この斜面・・」とてるさん。
コブに続く「背」の部分も左右の足幅ギリギリのところや片方の足幅しかない所もある。

時々右斜面に草や膝高の低木が生えているところがある。恐怖の尾根上のオアシスの
ように感じ、足元は立つのがやっとの面積でもそこでは息を整えられる。「ホッ」
剣ケ峰を振り返る (2005年3月の剣ケ峰の姿)
「てるさん、あのピークまで登ると弥山はすぐ。あそこまでは雪の頃にも来たことがある」
「あと少しですね。気を抜かずに行きましょう」ルートが急に楽になった。
案外知られていない三角点 弥山では石鎚山とQSO
10:10
弥山に到達。「てるさん、縦走できたね。天気と良きパートナーのおかげや!感謝!」
「矢問さんが、無線で天候回復待ちしてくれたのも良かった。足場の狭さと崩れやすさ
では、ある意味ジャンダルムよりもずっとスリリングでしたよ!」握手、握手。

縦走路の踏み跡には「この先危険」のロープ手前に三角点がある。
また高山植物保護地帯には植物を守るべく「立ち入り禁止」の赤いプレートとロープ。

木道の記念碑の所へ移動。「1710.6m」とプレートにあるが、現在の弥山の標高は
2001年5月30日に発表された「1709.4m」 が正しい

「向こうに行けなかったのですか」と男性に聞かれた。「いや、向こうから来たのです」
「行けそうですか」とハイカー軽装の男性。「おやめになった方がいいですよ」と回答。
「さて、下山開始」 (2005年3月の小屋の姿) 長い木道が続く
弥山は流石に夏道からは登りやすいので、小学生の団体や多くの登山者で賑わっている。
僕らも縦走の感動に酔いしれながら小休止。かんかん照りで暑い暑い。
弥山からも数名コールしたが応答なし。「まだいつものみんなには早い時間だからなぁ」
四国の石鎚山のUNTさんのCQに応答し、山の状況を伝え合った。
歩いてきた稜線が見える 下りが暑いなぁ・・・

11:00
「てるさん、ここからの夏道の下山は地獄の暑さと段差で足が疲れるよ。覚悟して!」
「しかし、朝のガスからは考えられない良い天候に変わってくれて良かったですよね〜」
長い木道と段差続きの夏道を下る。登る中学生の多い六合目避難小屋でてるさんを待つ。
小さい子供連れのファミリーがどんどん登ってきて挨拶に忙しい。

「元谷へ下るか、それとも夏道のまま行く?」「駐車場前に出る夏道のまま行きましょう。
矢問さん、自分のペースで下りてくれていいですよ」「了解。ゆっくり行きますわ〜」

12:10
阿弥陀堂の分岐の日陰で、10分ほどてるさんを待ちながらクーリングダウン。
「夏道の下りは膝に悪いですね。暑いしトータル2.5リットル水を飲みましたよ」とてるさん。
「僕も1.5リットルは飲んだよ」本当に暑くて無雪期にはどうも好きになれない下りなのだ。

登山届けポストに下山届けを提出して、12:30駐車場に到着。
大山の上空は雲が厚くなりつつあった。雷雲になりそうな雲だ。いまから登る親子もいる。

てるさんが探してくれていた「淀江ゆめ温泉(700円)」で汗を流し、帰路についた。
高速道路に乗り大山を見るともう上半分以上が雲の中。本当に幸運だった。
蒜山SAに着く頃には雨が降り出した。中国道では豪雨と恐ろしいほどの稲光が続いた。
「本当に天が味方してくれた幸運な縦走ができたよなぁ」「あの縦走路、いつまで完全崩落
から免れるのやら・・・。こんな豪雨ではまたあの尾根の崩落は進んでいくのでしょうね・・・」
解体期に入っている山とはいえ、その姿は威厳があり美しかった。

 ※注意:剣ケ峰手前の斜面やらくだの背の尾根にある踏み跡の崩落は
      とても進んでおり「大変危険な状態」。状況は日々刻々と変わっている。
      今回は微風の晴天、沢登りや登山の高巻き等でお互いの力量を理解し
      合ったパートナー、尾根の崩壊が今までの二人の登山経験で行けそうな
      状態と判断できたこと、等々の好条件が重なったからこそ縦走できた。
      剣ケ峰と弥山の縦走を決して安易に考えてはならない!。

本日の縦走ルート(赤:登りルート 青:下山ルート)
この1つ前の記録は「【京都】大栗・石仏とかき氷の歴史ハイク」の記録です
93年9月の大山 ・ 01年2月の大山 ・ 05年3月の大山
今回の大山縦走のパートナー「てるさんのページ」にリンク