【芦生】赤崎中尾根
芦生杉の巨樹の息吹を感じる「神の森」その2


無線の事や兵庫の山情報ではいつもお世話になってる丹波のたぬきさん夫妻、
やまあそさん、かねちゃんの4名を芦生の森にご案内することに。
いま入林できる「須後」からの入林でのプランを考えた。
赤崎中尾根は04年の3月にMICKEYと行って以来3年ぶりであり、芦生研究林は、今年
5月に息子ナイトンと研究林の観察勉強会に参加して以来今年は5ヶ月ぶりの入林だ。
【日 時】2007年10月28日(日)
【山 域】芦生・赤崎中尾根
【コース】 須後〜灰野−佐々里峠方面への登り−東の小野村割岳への尾根道
      −赤崎中尾根下り−赤崎谷出合−小ヨモギ作業所跡〜灰野〜須後
【メンバー】たぬきご夫妻、やまあそさん、かねちゃん、矢問 の5名
朝8時にかやぶきの里で待ち合わせ。たぬき号でたぬきご夫妻とやまあそさんがやってきた。
少し待ってかねちゃん号が遠回りしてやってきた。たぬきさんや、やまあそさんとは今年
8月の「大栗」でのかき氷ハイク以来2ヶ月ぶり。かねちゃんとは98年下旬に妻恋地蔵さんの
「深山の尾根と谷巡りオフ」でともに歩いて以来の実に9年ぶりの再会!
研究林事務所は屋根の修理中 由良川が増水してるなぁ
8:25
須後の駐車場を出発。晴天で気持ちの良い朝だ。入林届けを記載する。
研究林の事務所は工事の足場で囲まれていた。
「修理ですか」「屋根がダメになってやりかえてます」といつも研究林の観察勉強会で
お世話になっている技術職員さん。横にある「トロッコ」に興味津々のやまあそさん。
井栗さんの田んぼの稲刈りもすっかり終わっていた。芦生ももうすぐ雪の季節だ。
由良川は昨日の台風通過の雨で増水して濁っている。
灰野から登る 大きいなぁ!
8:55
灰野。ここからトロッコ道を離れて南へと登る。3年前は地形図の波線の沢筋の踏み跡を
進んだが、今日は集落跡の踏み跡から登る。3年前は右斜面への取り付きを見逃して
どんどん沢筋を歩き、途中で右斜面へと草木をつかんで踏み跡に出たが、今日はそうは
行かない。楽に進めるように、しっかり見つけないと。

途中で沢筋に入る。地形図の波線部分より沢筋を行く踏み跡の方が明瞭なのだ。
「以前もこれを通ったな・・」失敗の予感がよぎるが地形図的にはまだ先で右に取り付い
ても良さそうな所がある。「かねちゃん、このまま行こう」
斜面のトラバース鎖場 丸太橋を「揺らすぞ〜」 灰野谷左岸から右岸沿いへ
ときどきテープがあるのも以前と同じで気になる。説明板のある炭焼き窯跡の石積みの横
を通っていく。途中で左岸から右岸へと沢をまたぎ右岸を踏み跡は続く。
右岸上部にも大きな芦生杉がある。「すごいわ〜」とたぬきさんの声。
右岸から左岸の斜面へ 気持ちの良い峠道
9:40
黄色い太めのテープで右岸から左岸への徒渉を促している。左岸の山肌をジグザグに登る。
こんなしっかりした踏み跡があるなんて・・・。しかし地形図の波線とは違うものだ。
斜面に次々に現れる大きな芦生杉に「うわ〜」「これスゴイ」とたぬきさんの声がひびく。
「この程度の芦生杉で感動してくれていたら赤崎中尾根ではひっくり返りますよ」

3年前とは大違いで、沢筋の斜面には草も笹もまったく無い。鹿に食べ尽くされたようだ。
ときどき紅葉が始まった木もあったり、展望が開けたりして楽な登りだ。

9:50
芦生古道との合流点。須後までの尾根ルートを興味津々の皆さん。
僕は道標がまだ真新しかった4年前の03年9月に歩いたことがあるルートだ。
さらに緩い登りが続く。このあたりの草や笹も無くなっている。恐ろしき鹿の食害。
佐々里方面からの男性とすれ違う。
ばん採り跡 「また来たよ〜」 「ええ秋色やねぇ」
ばん採り跡を過ぎ、水飲み場、そして大段谷山との分岐点。
左の佐々里方面へ進む。佐々里峠へ下っていくと鳥か動物の観察をされている男性がいた。

佐々里への道を下りつつ、840m地点へ続く東の尾根に乗る。
この尾根が小野村割岳へと続く尾根道。「ここの分岐、ホンマに見落としやすいなぁ」と
やまあそさん。「しゃべってたらスーッと通り過ぎそうやね」とたぬきさん。

本日のメンバーの素晴らしいところは、地形図とコンパスを頻繁に使って現在地を確認され
ている姿勢。流石に兵庫の道無き山や尾根筋を縦横無尽に歩いておられる方達だ。
谷間でも尾根に入っても「同定できる山が見えにくいからなかなか読図の手応えがあるね」
とたぬきさん。GPSで確認すると、読図されてる現在地といつもピッタリ。「素晴らしい!」
「ブナバウアー♪」とやまあそさん 「オレの住みかを荒らすな〜」
10:50
840mピーク。イナバウワーをしているようなブナと同じポーズで頑張るやまあそさん。
さらには木の根の穴から野獣の顔をのぞかせてみんなを笑わす。「出してくれ〜!」

すこし広い気持ちの良い場所に出る。
ヘリコプターが旋回して飛んでいる。「何か事件でもあったのかな・・」
「気持ちの良いところやねぇ」 「倒れてる木もデカイなぁ」
このあたりの笹も草も全くない。鹿に食べ尽くされたのだろう。斜面にも全くない・・・。
千ケ峰に登っているだっちゃんから無線入感。父たぬきさんや母たぬきさんがQSO。
直線距離にして85kmほど。千ケ峰1005.2mからは59でとても明瞭に入感している。
「木の中から空が見える」 「ここもええ色してるねぇ」
11:30
雷でこげ落ちた杉地点。須後の駐車場で見た山の家から先に出発された10人ほどのグル
ープが食事をされていた。
父たぬきさんの持っている4エレアンテナに興味津々でしばらくアマチュア無線談義。

「お腹が空いてきたなぁ」とやまあさそさん。「静かなところで食事にしましょう」と僕らは
赤崎中尾根へと進む。尾根に入るのがわかりにくかったのにここの笹も全く無くなっていて
尾根筋がむきだし状態だ。小野村割岳とのルートと間違える人もでてくるかも・・。
「ス、スズメバチだ〜・・・」と、かねちゃん。「静かに静かに・・・そっと去ろう。」こわ〜。
「力強い姿やなぁ」 「人がちっぽけに見える」 宿り木にも秋色が
赤崎中尾根に入ると、たぬきさんややまあささんの「スゴイ!」「でかいなぁ」の声が続く。
あっちを見てもこっちを見ても振り返っても見ても素晴らしい芦生杉が点在する。
静かな森のレストラン
12:00
前に来たときに休憩した芦生杉のある広い所で昼食タイムとした。
みんなからあれやこれやと食べ物が出た。
「こ、こんなん絶対に食べきられへんわ〜」とやまあそさんが言っていたが、この森の
雰囲気に包まれてみんなで食べると食も進む。「うまいなぁ」「おいしいね」。
「芦生杉にも満腹!。食事でも満腹〜!!」

男性が1人下りていった。(しばらくしてピストンで戻って行かれた)
食事中にやまあそさんのお知り合いのグループから無線入感。電波状態はやや悪い。
トロッコ道を歩いておられ刑部谷あたりにいるらしい。赤崎谷出合で会えそうだ。
ホウの葉の絨毯地帯 かねちゃんがちっちゃい
13:05
下山開始。このあとも巨大な芦生杉の素晴らしさにみんなは感動しっぱなし。
「この幅というか周囲というか感動モノやね」とやまあそさん。
井ノ口山の芦生杉はさらに幅がデカイですよ」「信じられへん〜」
「芦生がなんぼのもんじゃい」と思っていた父たぬきさんも、芦生杉には感動している様子。
「また来ますね〜」 「赤崎谷出合への急斜面開始
さて、ピンポイントで赤崎谷出合へと下りはじめる。なかなか急な斜面だが、芦生の森の
良さはつかめる木々があるということ。残雪の頃は滑りそうでやや怖かったので、今日は
念のためロープを持ってきたが使わなくて済みそうだ。
「あ〜、やっと出合に出たね」 崩れ果てた赤崎軌道 「こんなん渡るの苦手や・・」
13:50
赤崎谷出合。
崩れたトロッコ線路を見て「こんな所通れない」「通るわけないでしょ。下へ行きます」
「えっ、こんな流れのある所を渡るの〜」「飛び石だけど簡単簡単」とみんな渡ったが、
やまあそさんだけは靴を脱いで渡った。「これが一番確実や」なかなか慎重派だ。

やまあそさんのお知り合いが待ってくださっていた。6〜7日のグループのようだ。
今日無線デビューというみかんさんはQSOされていた父たぬきさんとご挨拶。
みなさんとお別れして、僕たち5人は橋を渡って小ヨモギ作業所跡へ。
小ヨモギへの橋 小ヨモギのカツラ林 解体された小ヨモギ作業所
14:10
小ヨモギ作業所跡。鹿の頭骨がおいてある。ご夫妻が食事をされていた。
この春、技術職員さんに聞いていたとおり、作業小屋は解体されていた。
大きなメタセコイヤと大きな銀杏の木もまだ黄葉にはやや早い。
綺麗なケヤキの林も黄葉はもう少し先。このケヤキの林はいつも癒してくれる。
丸太橋が金属に 軌道上に巨木の倒木
さて、帰路に入る。トロッコ道を須後まで戻る。途中の傾いた丸太橋は落ちて、足場の材
料で作られていた。冬の時期は降雪での雪圧で潰れないように踏み板をはずすらしい。
灰野の手前の神社もいつも通りの姿。

14:50
灰野。「今日はここから登ったんやね」とみんなは集落跡を見上げる。
またまた午前中のようにヘリコプターが飛んでいる。「やはり何かあったのかな・・」
事務所への橋の手前で「芦生古道」の登り口を確認。道標は朽ちていた。
「お水をいただくわ」
15:20
須後到着。研究林事務所にパトカーが2台停まっている。ヘリコプターと関係するのかな。
入林届けに到着記録を追記する。
駐車場には朝とは違って沢山の車が駐車していた。

ここで皆さんとお別れし、モービル無線でたぬきさんと話しながら、美山町自然文化村で
汗を流してから帰路についた。久々の芦生の森、やっぱりいい森だと思う(18時着)

※京都新聞電子版によると「芦生研究林で遭難の男性無事保護 道に迷い衰弱」

 「南丹市美山町の京都大芦生研究林へ27日午前から山歩きに行ったまま連絡が取れ
  なくなっていた京都市右京区の自営業の男性(57)は、29日午前9時45分ごろ、
  同研究林内で南丹署員らが無事保護した。 同署によると、男性は道に迷ったとみられ、
  衰弱や胸部の痛みで自力歩行が困難なため、府警航空隊のヘリコプターで京都市
  左京区の病院に搬送した。
  男性は日帰りの予定で27日午前、滋賀県高島市朽木生杉から、県境の地蔵峠を経て
  同研究林に入った。夜になっても戻らないため、家族から捜索願が出ていた。」とあった。


 注意  【芦生の森】地蔵峠・三国峠から芦生研究林への入林禁止について ★
癒しの森としてフアンの多い芦生研究林ですが、貴重な森林を形成している由良川源流域は、
野生生物による食害と病虫害、そして広大な幽玄の森という趣だったのですが、バスツアーが
入ったり、テレビCMに使われたりと入林者の増加に伴う歩道(周辺)の拡大と踏み固めにより、
森林の荒廃が急速に進行。加えて入林者の事故や遭難も発生。
このような状況を少しでも改善するため、2006年6月より地蔵峠・三国峠からの入林が現在
禁止されています。自然は、一度壊れると、もとに戻すのは大変な事です。
現在入林できるのは入林の利用案内のとおり「須後の事務所構内から」のみです。
いろいろな尾根や峠道や谷筋から入林する人があとを絶ちません。
ここは管理されている大切な研究林。ルールは守って入林を心がけましょう。


なお、教育や研究等で入林の必要がある方は、本研究林事務所にて手続きが必要となって
います。京都大学の「芦生研究林のHP「利用案内」をご覧ください。
本日のルート(青い線)
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