【芦生】芦生の森・調査観察区画の防鹿ネット上げ作業 2015
  2015年4月29日(祝)


2011年から始まった「知ろう守ろう芦生の森」の植生調査活動も早いもので5年目に入る。
毎年、夏や秋にも継続調査を続けてきたが、来る度にプロット内にはブナやイワヒメワラビ以外の
草本類や木本類が風媒や鳥媒で芽生えて繁茂したり、被覆度や水不足で枯死していたりと様子が
変化するのには本当に驚くことが多い。

本日の芦生研究林の枕谷調査区での植生調査活動は、冬期積雪時に下げていた鹿害防護
ネットを上げることと、各プロットのプラスチック杭を木杭に換えて打ち直し、各プロットテープを
生分解性の「リンロンテープ」に張り直し、そして各プロット内のブナの稚樹の残存と枯死本数
変化の調査を2班に分かれて実施する。

春はブナのみの調査だし、イワヒメワラビも積雪でペシャンコでもあり、他の草本類もほとんど
芽生えていないので、夏や秋の調査より早く済む。

昨秋の作業日直前に交通事故に遭い、残念ながら鹿の頭数調査にもこの植生調査にも
参加できなかった。MICKEYとともに朝6時過ぎに家を出て吉野家で朝食をとり、芦生へと
向かう。 
   
   
美山かやぶきの里もまだ観光客も歩いていない時間で、山肌の新緑の淡い緑が青空に
映えて実に美しい。MICKEYは車で寝ていると言うので、僕だけが少し散歩した。
芦生ロードパーク下の川岸がえぐれた補修工事も急ピッチで進んでいた。次の台風までに
間に合えば良いのだが。

芦生研究林には、1時間も前に着いてしまった。研究林のK野さんが「早いですねぇ。
散策でもしてきて下さい」とおっしゃって下さり、事務所手前の20年くらいご無沙汰している
樹木園を散策してくることにした。
   
   
   
   
樹木園入り口のウワミズザクラ横の石段を登っていく。ウラジロガシ、ケヤキ、カナクギノキ、
クマシデ、アカシデ、ヤマトアオダモ、オオモミジ、モミ、コハウチワカエデ、コナラ、タムシバ、
キンキマメザクラ、ホオノキ、タカノツメなどの樹木の樹皮を観察をしつつ、それぞれの新葉が
開葉していて淡い緑の中を歩くのは本当に気持ちがよい。

福知山のふぉれすとさんや綾部のKさんが下の方に見えた。
HさんとSさんは、昨日のウツロ谷の鹿柵上げの協力に続いて2連チャンである。
「お久しぶりです。2連チャンお疲れさまです」とご挨拶。

9:30
受付の後、新担当のM山さんのご挨拶やK部長さんのご挨拶、T柳先生のご挨拶でスタート。
いつも楽しい進行をしてくださっていたM田さんは人事異動となり、T柳先生とのかけ
合い漫才的なやりとりが今日は聞けないのは実に寂しい。「やはりM田さんがいないと
天気はすばらしい天気になりましたね。これで誰が雨男か良くわかりましたよね♪」と
T柳先生。いつもM田さんと展開されていた天候バトルコメントに、参加者は大笑い。

ご指導はT柳先生と研究林のK野氏。ボランティアメンバーからは11名が参加し、班総括は
京都府からの4名、そしてK部長さんは40年ぶりに芦生の森に来られたとのこと。
その中にS野君がいた。2年前の11月に鹿の区画法頭数調査の時には京大生として調査
参加
していたのでよく覚えている。京都府に就職して今日は、府の職員として参加している。
僕もT柳先生にしてもうれしい再会である。

K野さんの車に1班のメンバーは乗せて頂き、2班はT柳先生の車と京都府の車に分散し
て乗り、研究林内の林道を40分ほどかけて地蔵峠へと向かう。林道の法面にはオオイワ
カガミが咲いているのが散見できた。北側の谷斜面にはさすがにまだ残雪がある。
フサザクラの沢山の白い花が青空に映えてよく見えた。芦生も花の季節がやってきた。
   
   
先月この地蔵峠や調査地を見に来たときはまだ積雪が多かったが、今日は全く無い。
今日の天気予報は降水確率20%だったが、雲も無く晴天。木杭や道具類を全員で運ぶ。

地蔵峠のブナの新緑が青空に映えてなんとも言えない位に美しい。
「やっぱりブナの新緑はいいわ♪」と、花よりブナの新緑が好きなMICKEYは笑顔。
アオバトの声やツツドリの声が聞こえる。

10回以上参加しているボランティアは今日は僕を含めて3人、8回以上が3人いるので
手順はわかっている。春の活動は初めて参加したという人にはそれぞれが教えれば良い。

後任のM山さんは、最初はとても緊張されていたが、作業に慣れているボランティアの
皆さんともすぐに打ち解けて下さった。

最近GPSを使用し始めたFさんも現れた。
「あっ、Fさんだ!」とお元気そうなお顔を見られて喜ぶMICKEY。「こんにちは」
   
   
僕たち1班は、2グループに分かれて調査実施。MICKEYと同グループになったのは初めて
のことだ。1班はすべての作業が早く済んだので、2班の調査区を手伝いに行った。
僕とMICKEYとSさんは、S野君のグループを手伝うことになった。

調査地(柵内)は除去区20プロット、放置区20プロット × 2箇所 (1班、2班に分ける)
対象区(柵外)は除去区 9プロット、放置区 9プロット × 2箇所 (1班、2班に分ける)

稚樹の成長具合は10cm程度のものから30cm位まで個体差があり、茎の太さも竹串程度
から細い箸程度の物まで差があり驚かされる。ただ、まだ開葉していないのでブナの特徴ある
葉がまだ見えず、葉芽ののみで、横の目印の串が折れたり流れていると同定しにくいものも
あった。 
   
   
イワヒメワラビの被覆度や、他の草本類、木本類による陽の当たり具合や土壌の保水性で
も違ってくるのだろうと思われるが、実生から4年目の今も観察していると実に興味深い。
僕が担当したサブプロットでは、枯死はゼロで、昨年末の残存ブナはすべて生きていた。

この調査はブナの「成り年(マスティング)」の翌年の多くの稚樹が芽生えたときから始めた。
今年か来年にはまたブナの「成り年(マスティング)」が訪れて、稚樹が芽生えて変化する
ことも期待できる。森の変化を見ながら調査するのもとてもおもしろい。
 H24-H26の集計  H24.05.16  H26.11.29 残存率 
 調査地1-除去区  127本  54本  42%
 調査地2-除去区  118本  58本  49%
 調査地1-放置区  54本  10本  18%
 調査地2-放置区  218本  89本  40%
 柵外区1-除去区  0本  0本  
 柵外区2-除去区  0本  0本  
 柵外区1-放置区  0本 0本  
 柵外区2-放置区  0本  0本  
ネットの張り直しで、支柱と支柱の中間部がなぜか縦方向に収縮したかのように伸びない。
「不思議ですね」とT柳先生に話した。T柳先生からは、支柱の打ち直し時の事故防止の
確認の仕方と、ネットの接合部の戸締まりに関しては鹿の捕食方法や経験上の入念なチェ
ックとその理由を指導して頂いた。

2~3人のグループが、北の方から数名歩いてきた。どこから来たのだろうか。
   
2013年11月の調査時にT柳先生から当時話題になっている「マダニ被害」に関して
講義があり、ペット用の回転させながらダニを取るO'TOMのTICK TWISTERがなか
なか有効
だということで僕も買ったが、今日はまた新しいものをT柳先生から紹介された。

ルーペとLEDライトがついているピンセット。精密工作などで使うものでDIYの店でも
売っている。(ヤブコギ登山の多い僕とMICKEYは、これもネット注文して救急セット入り)

昨日のウツロ谷の鹿柵張りでもこれが役だったらしい。
細かい作業用のピンセットで、拡大鏡とLEDライトが付いていて老眼にはありがたい。

本日の予定をすべて終えて、須後へと戻る。林道をガイドツアーの人たちが歩いていた。

来年、国定公園化が進めば大学側と入林者との「入林許可区域」が話し合われるらしい。
特別区との関係など、どのようになっていくのだろうか。

「ウツロ谷も相当植生復活してきました。上谷などが昔のように戻る頃は我々はもうこの
世にはいなくて見ることは出来ないでしょうけど、次代の人たちにこの森のすばらしさを
残していけるようにしていしましょう」という、T柳先生の最後の締めのお言葉がとても
印象に残った。

14:45
須後にて解散。
「お疲れさまでした」と今日同じ班だった亀岡のTさんと綾部のKさんと名刺を交換。
それぞれが自車で帰路についた。

僕とMICKEYはいつものように美山自然文化村へ立ち寄って、かえで御膳と鹿カツを
食べてから帰路についた。MICKEYはこれがないと芦生にはなかなか来ようとしない。
かやぶきの里は朝とは大違い。観光客であふれていた。途中のファミマでコーヒータイム。
   
   
17:30
帰宅完了。黄砂で汚れた車を洗い、風呂に入ってさっぱりした。
次の調査活動は8月だ。繁茂した多くの草本類の種別を調べたり被覆度を調査する。
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