【芦生】芦生の森の防鹿ネット内観察とネット下げ作業2013
    2013年11月16日(土)芦生研究林 8月の作業後の植生調査・観察


「芦生地域有害鳥獣対策協議会」の「知ろう、守ろう芦生の森」の植生調査の継続活動で、
南丹広域振興局の森林管理担当の皆さんとともに今日もボランティア協力する。

降雪前の「芦生の森の防鹿ネット内観察とネット下げ作業」は、一昨年は11月21日(月)
昨年は11月22日(木)だったが、今年はそれより1週間くらい早い16日(土)となった。
今まででも早すぎると思っていたのに、さらに早い時期になった。

数日前、芦生ではすでに少し雪が降ったが、雪に覆われる前のこの早いネット下げは、
シカにネット内の草本類を「鹿さん、ランチにディナーにどうぞ」とならないのだろうか。
(もうこの時期になると、植物が光合成で蓄えた養分は根の方に移動し、地上の葉は
枯れていくだけなので、シカに食べられても植物にとってはそれほど影響はないらしいが)


集合時間は須後の研究林事務所前に10時。家を7時に出て吉野家で朝食。
「あっ、今までの調査植生写真を持って来てない!」と気になり、また家にとりに戻った。
   
 美山のかやぶきの里は濃い霧で覆われていた。芦生ロードパークの紅葉もいつもより早い
時期なので色づきが今ひとつ。
   
9:30
須後に着くと、Fさんは7時半に着いて付近の植物を観察していたとのこと。
9時半以降に来るようにと通知があったのでゆっくり来たのだが、早く来れば良かった。
Hさんも早く来ていたようでトロッコ道を観察してきたらしい。MICKEYと共にご挨拶。

いつも講義する建物はいま耐震工事中で入れない。初めて参加する人の為にも村田さんが
外で概要説明。京都大学の高柳先生からも補足説明をされた後、26人はバスに乗り込んで
研究林内の林道を通って地蔵峠へと向かう。
今回、京都大学からは、先日の臨時公開講座でもお会いしたNさんも同行して下さった。

つい2週間ほど前の今月2日に申請許可を頂いてMICKEYと歩いたブナノキ峠手前で
見えた林道や、下谷の林道もバスは通ったので車窓から記憶に新しい2週間前との黄葉の
違いや、落葉が進んで落ち葉の絨毯になっていることが良く見て取れた。 
   
 11:20
地蔵峠。今回も4班に分かれて道具を持ち出発。僕は脚立と杭が入ったザックを持った。
MICKEYはFさんと同じく1班の3名チーム。僕は2班で初参加の女性1名を含む3名チーム。
3班はフォレストさんなど6名チーム。4班は、ここで合流したTさんやHさんの5名チーム。
それぞれの班にはいつも通り、南丹広域振興局の森林管理担当の方が1名班総括として
つき、2班に1名写真担当がつく。
   
11:35
調査地到着。ネット内の植生変化に驚きの声。8月10日に観察したときとは全く違う。
高柳先生の植生変化やシカの生態についてのミニ講座開始。
みなさんしっかり講義メモをされていた。 
   
そしてネットを下げる作業だが、人数もいるのでホントにすぐに終わった。
空腹になるほど働いていないが、植生調査の作業前に先に弁当タイムにすることになった。

僕とMICKEYは、テルモスのお湯でカップの豚汁を作っておにぎりをほおばる。
天気も良く、風もなく全く寒くない。「気持ちいいね、今日は」とMICKEY。
2年前の作業時は冷たい雨とアラレが降って、寒くて食事も長治谷の作業小屋内で食べた。
   
植生調査開始。僕の班は、初参加の女性Fさんに調査図の見方や葉がほとんど落ちたブナ
の稚樹の見分け方や、冬芽はどんな形かを教えて、女性のFさんを中心に体験経験して
頂いた。「だんだん冬芽や稚樹の姿がわかってくると楽しいですね」とFさん。

8月の調査時には、ブナの生存本数、枯死本数、被覆度、タニウツギ、アカシデ、イヌシデ、
などの木本類の稚樹の本数を調べ、次に草本類のツボスミレ、サワオトギリ、ハシカグサ、
イグサ、スゲ、ダンボドロギク、ノミノフスマ、チドメグサ等の被覆度を担当区の1つ1つを
調べたが、今回の調査は前回プロットした調査用紙のブナに基づいてブナの生存本数、
枯死本数を中心に調査するので、作業はとてもシンプルだった。 
   
1班と2班の調査区のシカ柵内では、イワヒメワラビを除去した区画にタニウツギが目立って
大きく成長していた。3班と4班の調査区はシカ柵内では、ミズメやクマシデが目立って大きく
育ち、トゲだらけのクマイチゴはミニヤブのように繁茂していた。

しかしイワヒメワラビを除去せず放置した区画では、相変わらず他の木本類はほとんど見
られない状態。高柳先生によれば、現在の状況ではイワヒメワラビの存在によって植生の
回復を阻害していると言えそうとのこと。3班4班の調査区では、母樹の位置からもそれが
明らかに見て取れた。今後の継続調査で検証していく事になった。

また、シカ柵外の調査区では、あれだけあったイグサが見事にシカに食べられていた。
シカの食み跡やシカが食んで根ごと抜いたイグサの残跡もあった。

植生調査作業が終わって、シカ柵の柱の補強の角度や仕方を高柳先生から指導を受ける。
補強機材は今回持参したが、デポしておいて、来年実施する予定のようだ。
   
13:40
調査区から長治谷へと移動。今回は時間の関係でウツロ谷のABCプロジェクト実験区の
見学寄り道は無しとなった。
長治谷へ戻るまでにも複数名のハイカーと出会う。「ちゃんと入林申請しているのだろうか」
それどころか、3人連れのハイカーの一番後ろの人は袋一杯のキノコを採って持っている
ではないか!ここは採取禁止の研究林なのに!

途中で高屋氏の水源かん養機能や保健・レクリエーション機能などの森の機能についての
ミニ講義があった。
 
14:25
長治谷作業小屋前に到着。バスが待ってくれている。

高柳先生から今話題になっている「マダニ被害」に関しての5分間のミニ講義。
ダニ噛まれて皮膚からとるのはなかなか難しいが、ペット用の回転させながらダニを取る
O'TOMのTICK TWISTERがなかなか有効だということで現物を見つつ情報を聞いた。

無理に虫体をひきちぎると、口下片が皮膚内に残存し、炎症が続発し、切開除去が必要に
なる場合が多々ある。ダニの種類によっては人間にも怖い伝染病を媒介するものがあるの
で、素手で触るのではなく、ピンセットやゴム手袋をはめることも必要。
マダニが媒介し人間が発病してしまうウィルス”重症熱性血小板減少症候群”(SFTS)
存在することが明らかになり、SFTSによる死亡例がまた最近新たに発表されている。

ダニを見つけた時に取る方法としては、「消毒用エタノール」をガーゼなどに含ませしばらく
ダニに押し当てておくと簡単に引き剥がすことが出来ることは、僕も知っている。
しかし、山に持って行くには今回高柳先生が教えて下さったO'TOMのTICK TWISTER
手軽で良さそうだと思った。

「ヤブ山によく行くから、僕らには装備の必需品かもね」と僕。「同感だわ」とMICKEY。
                          ( ★ 帰宅してすぐにネット注文した )
   
そして、芦生地域有害鳥獣対策協議会の副会長のNさんから、作業終了のご挨拶があった。

あとは、バスに乗り須後へと戻るだけなのだが、せっかくの観察日和だし、歩き足りない。
同感の様子の芦生の調査をずっとされているFさんが、高柳先生や、そして村田さんにも
特別の許可とお許しを頂いて下さり、FさんとHさん、そして僕とMICKEYの4人は、ケヤキ坂で
バスから降ろして頂き、徒歩で須後までFさんの指導のもと植生観察しながら帰ることにした。
「ケヤキ坂からなら、日没直前の5時くらいには須後に着くだろう。」とFさんと僕の予測。
   
   
Fさんが次々にその名前や絶滅危惧種などを説明して下さる。黄葉が美しい。
後ろから京都大学のNさんの車が来て手を振りつつ過ぎ去った。

Hさんも「あっ、これは***ですよね」とどんどん名前が出てくる。
僕とMICKEYは「ほ~!」「へ~ぇ!」と、感心しつつキョロキョロしてばかり。

後ろから、学生さんを1人乗せた高柳先生の車がやってきて僕らの横に停車。
乗っていたのは、今月末にあるシカの頭数調査の宿泊や無線機に関しての質問メールを
僕が送った窓口係の学生のIさんで、その回答を高柳先生が僕に直に説明して下さった。 
   
   
   
オクモミジハグマ、ジャゴケ、ツルニンジンの種子、オオカニコウモリ、ヤマボウシの紅葉。
クロモジの冬芽を「バルタン星人」というFさん、「いや子犬でしょう」というHさん。
「さてどちらに軍配が上がるか。」と僕。

今日から使う観察用のお手軽デジカメはOLYMPUSのTG-2。
接写に顕微鏡級のスーパーマクロモードがあり、おしべめしべなども綺麗に撮れるのだが、
まだ慣れていないのでブレが多い。「春の花の時期までには慣れるさ・・・」と僕は苦笑い。
   
   
その他、イチヤクソウ、オトコヨウゾメ、ノブドウ、ツチアケビの種子、そして針葉樹と
の半寄生の木本であるツクバネなどをメモ。しばらく歩いたら頭からサーッとどんどん抜
けてしまい、またHさんにいくつかをそっと「これ何だったっけ・・」と聞き直す始末。
面倒がらずに教えてくれるHさんに感謝。MICKEYもFさんに個別指導を受けていた。
ゆっくり観察しつつ、Hさんの森への熱い思いの話しを聞きながらのんびりと歩く。 
   
   
17:00
長い林道も盛りだくさんの観察の内に終わり研究林の入口に到着。到着時間も読み通り。
明日もFさんは由良川上流の東側の尾根筋や谷筋を調査されるという。

「19日の夜に、京大のキャンパスでのシカの頭数調査の説明会でまたお会いしましょう」と
ここでお二人とはお別れ。しばらくすると日もすっかり落ちて暗くなった。

僕らは美山町自然文化村の湯にゆっくりはいって、おきまりのシカ肉料理のかえで御膳や
シカ肉カツや地鶏の唐揚げを頂いてから、ゆっくりと帰路についた。
次男は今夜、早くも仲間と忘年会らしいので、MICKEYは夕食を作る心配は無いらしい。

明日は地区のクリーンアップの日。朝から地区の掃除や草刈りである。
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