【北摂】箕面大滝と猿軍団の今を歩く


【行き先】北摂:箕面大滝と猿軍団の今を歩く
【日 時】2013年10月27日(日)
【メンバー】MICKEY・矢問
【コース】 ようらく台園地-箕面大滝-天上ヶ岳-ようらく台園地 
台風27号の影響で、今年の2泊3日の芦生研究林の公開講座(10/25~27)が悪天候で
中止になったが、ありがたいことに京都大学の構内で1日目の予定であった講義内容を夕刻
まで研究林長をはじめ講師の先生方が多くのスライドで提示しながら実施して下さった。
いつも芦生研究林のボランティア活動を一緒にしているHさんやMICKEYと出席した。

その中でも出た「国定公園」。アメリカやドイツに比べて日本の国立公園や国定公園は
名ばかりの所も多々あり、芦生の森も2年後の国定公園化の話しがあるが、国定公園の
管理は都道府県のため、その財政や予算によって管理や整備の度合いが大きく違っている。
あの素晴らしい植生と生物多様性の残る芦生の森の環境を守れるのだろうか。
変な観光化が進み、盗掘や草本類の踏み荒しが広がらないかと、危惧するところである。
芦生の森は4,185.6haもあるのだ。監視の目が行き届かずに荒廃していかないだろうか。

1967年の明治の森 高尾と箕面の2箇所は明治百年記念であり、他の国定公園より
規模が桁はずれに小さい。(高尾777ha、 箕面963ha) 
そんな狭い国定公園で、しかも大阪府という大きな自治体でも監視や管理は行き届かない。

五月山から箕面の滝までは、以前から良く歩いているが、いつもとは少し違った視点でも
歩いてみようと、MICKEYと行くことにした。夕刻に所用があるので、14時には帰宅したい。

ようらく台園地へはいつも国道423号線の止々呂美から林道利用で登っていたが、廃車や
電化製品の不法投棄があとを絶たず、今年の6月以降はゲートが出来て車は入れない。
仕方なく、五月山ドライブウェイ利用で300円を払って登り、ようらく台園地へ。
   
8:20
ようらく台園地から出発。豊能自然歩道である。以前には無かった「ナラ枯れ観察木」と
いうプレートを木に付けた所が点在していた。
NPO山麓委員会(やまなみネット)が「四季折々に美しい箕面の山を守るために」と
ナラ類、シイ・カシ類の観察木を選定し「異常を発見したら連絡が欲しい」と記されている。
電話番号、FAX番号、メールアドレス、携帯番号を明記し、協力を呼びかけていた。
「芦生の森もナラガレが一時期ひどかったよね」とMICKEY。

「これはイワヒメワラビかしら」とMICKEY。シダ類はなかなか難しい。持参した本を
見ながら観察していると、親子連れ4人が横を通りご挨拶。先に元気に進んで行かれた。

いつもは南西に下る分岐で、今日はそのまま南東に進む。「10年くらい前はいつもこの
ルートの沢沿いを歩いたのを覚えてる?」と聞くと「記憶にない・・・」とMICKEY。
「こちらのルートの方が静かだし、鳥の声が多いので今日はこのルートにする」と僕。
先に行った親子連れは違うルートで行ったようだ。逆向きの足跡しか残っていない。

8:45
六箇山方面と滝道との分岐に「台風18号の影響により落合谷手前で広範囲にわたり
杉が倒木。通行できない状態(9月18日情報)」とあり地図もついた情報板があった。
   
   
「ちゃんと歩けるのかしら・・・」とMICKEY。「このあたりはNPOや大阪府の担当部門が
整備しくれているので大丈夫と思うけどなぁ。もう1ヶ月以上前の情報だし。その管理
状態はどんなものかも見られるし、ヤブコギでも行けるし」と滝道方面に進んだ。
次の分岐でも僕たちは滝道方面に下った。
「へ~、こっちのルートの方が鳥の声も多いし、感じが良いね」とMICKEY。

小さな流れを渡り、また丸太橋を渡るとようらく台からの分岐。「きっと親子連れはこの
ルートで来ると思う。僕らは直線ルートだったので時間的に抜いていると思うなぁ。」

小滝が左手にある。そしてまた丸太橋を渡ると、やや立派な滝。
「あっ、この滝は覚えてるわ」とMICKEY。
「久々なのでちょっと下まで下りて滝の写真を撮ってくる」と僕。右斜面を下る。 
   
トラバース気味に進み、登山道から下って来るMICKEYと合流。
後ろから、思った通り親子連れが来た。小さな柿の実や落ちている木の実を観察したり、
かじったりして味を試してゆっくりしていたので、親子連れがまた先に行った。

9:30
沢を飛び石で渡ると右からようらく台からの道と合流する。
すぐ先が箕面の滝への駅からの観光道。
「倒木もちゃんと整備されいたね。やぶこぎもなくいいルートだったわ~」とMICKEY。 
   
箕面の大滝への観光滝道は人が多いものの、まだ紅葉には少し早いのでそれほどでもない。
赤と白のサザンカが咲いている。
のんびりと道の横の斜面の草を「ああでもない、こうでもない」と観察しつつ進む。 
   
9:50
箕面の大滝。「日本の滝100選」に選ばれた滝である。
雨後だから以前より水量が多くて滝から落ちる水量が素晴らしいのなら良いのだが・・・。

箕面森町のニュータウンから止々呂美までの箕面グリーンロード(有料道路)を作る為に
掘ったトンネル工事は平成11年から始まり、トンネル内で毎分9トンもの水が湧き出し地下
の水脈を切断してしまったという。

その結果、箕面川も水が涸れはじめ、箕面大滝に落ちる水量も減ってしまうために、トンネル
内の溢れた水をポンプで吸い上げ、川へと還流しているらしく、現在の国定公園の箕面の
滝に流れ落ちている水の約2割は「ポンプ水」ということらしい。
ポンプを動かす電気代は、年間3千万円もするらしい。これが半永久的にかかる。
そのお金は通行料金からまかなわれるとのことだが、そんなに多い通行量とは思えない。
箕面の滝は自然の水の流れでの滝ではなく、ある意味「人工の滝」になったとも言える。


滝の前の「鹿バーガー」「鹿串カツ」「猪鹿串団子フライ」「ジャンボ鹿コロッケ」を売っている
お店は、今日は開いていなかった。
「まだ時間が早いのかしら」とMICKEY。「稼ぎ時の日曜日なのになぁ」と僕。
   
   
 10:10
帰路はまた久々のルートで戻ることにした。
百年橋からは、昔は猟師谷のルートで西へと、ようらく台まで戻れば良かったが、今は
「猿を自然に帰す実験中」の範囲内となっていて通行禁止地帯で歩くことは出来ない。

「2004年の11月に歩いた、百年橋から北に登る自然散策路2号線を歩いて、箕面自然
歩道に入り、天井ヶ岳でランチタイムにして、ようらく台園地に戻ろう」と僕。
「了解」とMICKEY。

「通行注意」の立て札がある。大阪府北部農と緑の総合事務所・緑地整備課が整備されて
いるルートらしい

野鳥の説明看板、昆虫の説明看板、森林内の陰生植物の説明看板等が散策路にはあるので
箕面のこの森の植生や自然の動物なども概略がわかる。エノキやアワブキの木がある。
しかし、なぜか、看板のなかで「猿」については触れられていない。
知人に「箕面」と言えば「猿」と返事された時代はもう今は昔なのかもしれない。

箕面の猿は山中で餌づけしている為、もはや自然のものとは言いがたいという説もある。
25年位前から「箕面の猿を山へ返す運動」が行われており、餌をやってはいけないこと
になっている。これは箕面市の条例でも今は決められている。

昭和29年に大阪市立大学(後に京都大学)の川村教授が、猿の餌付けに成功したことから
「箕面の猿」がはじまり、翌昭和30年には、滝の上に自然動物園が開設された。杉の茶屋
から谷へ降りた所で、観光客は入場料を払って入っていった時代があった。
(現在は立ち入り禁止になっている場所・ここが餌付け場でもあった)

翌31年には、箕面の猿は、国から天然記念物に指定され、猿は箕面の重要な観光資源と
なった。しかし、その後次第に、猿が観光客に被害を与えるようになった。
人間が持っている食べ物を奪うし、人に襲いかかって来るようなにった。僕らが小中学生の
頃に、遠足で行ってた頃も弁当やリュックサックを、級友達が奪われた怖い想い出がある。

栄養価の高い食物を与えられ、さらに、人間の弁当まで奪うのだから、繁殖は加速度的だ
った。天然記念物に指定された昭和31年には、せいぜい100匹位だったのが、あっという間
にどんどん増えて、600匹をも越えたという。

猿による被害は増える一方。昭和52年に至ると、猿害のあまりのひどさに遂に自然動物園を
廃止し、猿を観光の材料にしようという方針を180度転換し、猿を人間から分離し遠ざける
ことになり、餌付けの場所を、滝の上から西の山中に移し、管理員が猿の様子を見ながら
小麦を餌として与えた。また、滝の付近には警備員を配置し、猿が人間に近づこうとしたら
棒をもって追い払っていた。
自販機に落ちたお金を入れて缶ジュースを出す猿のTV報道でも有名になった「箕面の猿」。

そして、観光客には「猿には絶対に食べ物を与えないで頂きたい」という条例も決まった。
「人間は、餌付けして引き寄せておいて、今度は追い払うなんて・・」と猿の声が・・・。

猿を本来の自然の野生の姿に返していこうと、国有林の間伐地3.2haに、猿の食餌となる
樹木の植樹を開始し、平成7年には、1000本を植樹するという当初の目標も完了したらしい。
かつて「滝とお猿ともみじの天ぷら」といわれた箕面の観光集客フレーズから「猿」は消えた。

10:50
散策路から西への箕面自然歩道の尾根道へと入る。ザックを置いてお茶を飲もうとする
MICKEYに「ここでザックをおろしたらダメ!上からも横からも猿に見つめられてる。
ザックをさっととっていくか、牙をむいて威嚇しに来るから、目を合わさないようにゆっ
くりと歩け!」と注意する。行く方向の左手前方には数百頭の猿がこちらを見ている。
昔、すぐ南の猟師谷で猿軍団に取り囲まれてコワイ目に遭ったことを思い出した・・・。

登山道の上に顔が真っ赤な大きな雄ザルがこちらを見て動かない。あと10mくらいにな
っても動こうとしない。こちらも怖くて止まって様子を見る。すぐそばの木の上からも、
数十匹の猿が僕らを監視している。その大きな猿がゆっくりと斜面の方へいくと、斜面に
いた数百匹の猿が一斉に動いて斜面下部へと下り始めた。「す、すごい数・・」とMICKEY。

しばらく進むとまた大量の猿がすぐ前の登山道から動かず、こちらを見ている。
熊よけ鈴をならそうが無駄。逆に人が来るとわかり、エサを奪おうと近づいてくる・・・。
去ってくれるようにと祈りながらじっとしていると、じわりじわりと近づく猿と遠ざかる
猿に別れた。そして全てがゆっくりと左斜面へと下って行った。「ホッ」「怖かったなぁ」
数分間だったろうが、長い時間に感じた。猿の牙でやられた事故は全国でも増えている。
   
11:20
天井ヶ岳。「覚えてるわ、ここ」とMICKEY。MICKEYは2004年の11月以来9年ぶり。
ここでお昼ご飯にする。お湯を沸かしラーメンとおにぎり。ここなら猿軍団もほぼ来ない。
無線機をつけると、伊勢市の倉部山からJH3JFFさんがCQを出されていた。
いつもの金剛山系からではないようだ。久々にJFFさんと交信した。

親子連れも単独者も来た。みなさんここでランチタイムをされるようだ。
   
   
民家の私有地とのギリギリのラインを登山道は通り、箕面ダムからの道に出る。
陽当たりが良くて、道沿いにはクサギの濃藍色の実が天然のブローチさながらに輝く。
この実は草木染めに使われている。
赤と黒のコントラストが目立つゴンズイの実も沢山ある。

12:40
ようらく台園地。晴天の日曜日、猿軍団地帯以外は気持ちの良い散策ができた。
夕刻の用事にも間に合うように帰宅出来た。

歩数計は16,514歩、2,896kcal、燃焼脂肪52.4gと出ていた。
 本日のルート
 
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