京都北山】県境尾根周辺の観察会とナツエビネ保護調査


【日 時】 2013年10月13日(日)
【コース】 盗掘防止のため詳細は明記せず
【メンバー】Fさん、Hさん、Tさん、MICKEY、矢問 
芦生の森をくまなく調査されているFさんによると、ナツエビネが鹿の過採食に遭って
激減または小型化し、将来絶滅の可能性すら考えられる状態にまでなっているらしい。
そこでこれを予防する方法として、鹿の不嗜好性植物の代表的存在である「イワヒメワ
ラビ」を利用して実験し検証することを思いつかれた。

ナツエビネは常緑であるため、鹿の餌が少なくなる晩秋から早春にかけて最も被害に遭い
やすいという。そこで秋に刈り取ったイワヒメワラビを、ネット状にナツエビネの上に
被せることによって、雪が降り積もるまで鹿の採食から守れるのではないかとFさんは
考えられた。

その結果を比較するための基礎データを収集すべく、芦生研究林でのボランティア活動で
僕もMICKEYもご一緒しているHさんとTさんとともに、調査区で8月に雨の中を事前調査を
されて、今回はそのナツエビネにイワヒメワラビをパターンに分けてかぶせる作業。
僕とMICKEYも、今回はその調査作業に同行参加させて頂いた。

朝7時に集合なので、家を4時半に出た。星が沢山出ている。
途中のコンビニで朝食をとっていると日の出。今朝は11℃。
集合地へ向かう道では、この前の台風18号の影響か、河川に土砂が積もっていた。

集合地手前の集落の路肩にFさんの車があり、その先にいらっしゃったFさんと合流し
集合地のへと僕の車で向かう。

すぐに逆方向からTさん、そして長靴を履いて準備しつつFさんがMICKEYにヤハズソウの
説明をして下さっていたらHさんが到着した。全員長靴を履いて7時出発
   
イヌコウジュ   クロバナヒキオコシ
   
ヤハズソウ   
   
 ノコンギク  アキチョウジ
   
ヒメコマユミ(日本海側希少)   アキチョウジ
早朝からナツエビネの某調査地へと向かい調査作業をするのかと思っていたら、なんと
五感を使っての木本類や草本類の観察会を県境尾根の周辺でFさんがして下さるらしい。
Hさんは今年の4月のブログにこのルートでスケッチされた記事を書かれていた。

アキチョウジからはじまり、ツリバナ、クロバナヒキオコシ、ノコンギク、カナクギノキ、
コウライナンテンショウ、イヌコウジユ、ヒメコマユミ、コバノフユイチゴ、ケンポナシ、
カリガネソウ、カラスシキミ、コショウノキ、サワフタギ、ツルアリドオシ、マスタケ、
バイカオウレン、カノシタ、ミヤマウズラ、コバノイシカグマ、アズキナシ、ヒロバスゲ
ナ、シロモジ、ウラジロノキ、オオウラジロノキ、コシアブラ、サルナシ、ヤマボウシ、
ヘクソカズラ、イタドリ、コバノガマズミ、ミヤマガマズミ、クリタケ、クリ・・・
歩き始めた足下から目に見える植物や木やキノコを「これは?」と伺うまでもなく、Fさ
んが次々に説明して下さり、そのいわれや味や特徴などを図鑑やガイドブックなんかより
植物音痴の僕と相棒にわかりやすく次々に教えて下さる。
                   中根勇雄 著
「こんなに楽しい観察会は、何年も前に「芦生演習林・植物の手引」を書かれた中根
勇雄先生と芦生の森を歩いて以来だなぁ」と、中根先生の笑顔を思い出しつつ歩いた。
最後にご一緒していただき歩いたのは、平成18年の芦生研究林の公開講座の時だった。
全く今でも成長していない自分には情けないが・・・・。
これも高山市の小野木先生なら「あなたはゴルフ場の芝生だ」と、しかられるに違いない。
「木(気)が無いんだよ!」、と・・・。

「ビデオカメラを持って来たらよかったなぁ。音声と画像を併せて撮らないとこのメモと
写真画像の一致は、帰宅したらもう頭から相当抜けていて至難の業だな」とMICKEYと
顔を見合わせて苦笑い。

「私たちは家の近所の堤防や、すぐそばの里山の木々や草花を四季折々にもっと観察して
おかないと、花がなかったり葉がないと全然わからないね・・・・」とMICKEY。
               
                小野木三郎 著  小野木三郎 著
「花がないとわからない、葉がないとわからない、実がついてないとわからない、どんな
種なのか見たことがない、ではだめだよな・・・全く見分けが付かない木や草が多いよな。
今まで登山はしても、周囲の草や木にそれほど関心を持ってじっくり観察していなかった
ツケが回ってきたんだよ。同じ山に四季折々に行くように、草木も四季折々の姿をじっくり
見ないとダメだなぁ。小野木三郎先生流に言うと山岳散歩ではなく山楽山歩をしないとね。
山を楽しみ、山や森の木や草や動物をしっかり観察してかみしめるように歩く、だよな。

「親しみ」そして「知る」ことから「守る」という明かりがともるとおっしゃっているしね。
「この花病」のようにこの花は何、この花は、と花の名前ばかり知っていても全然おもしろく
ないし、それが「守る」という行動にはつながっていかないし。▲▲▲山に登りました、でも
その山の植生や生態系は詳しく知りません、では薄っぺらい登山だったかもしれないね。
楽しませて貰っている山や森になにができるか、も考えたいね。

小野木先生が書かれた「御嶽山の自然」に警鐘を鳴らす本に五の池小屋で出会えて、「山の
花学」や「いちにの山歩」という著書にも、小野木先生が書かれていたように、もっと周囲を
しっかり観察する山歩をして、小野木先生推奨の学習ではなく「楽習」をしたいね」と僕。

Fさんが、花や葉がない時期でも木や草を次々に特定されるのは、やはり四季折々の姿や
その土壌、陽当たりなど地形のことも、その草木の生態をとても詳しくご存じだからだ。

山もそうだが、四季折々の草木の生態を、姿を、深く知っているということは本当に素晴ら
しいことで一朝一夕には身につかない。Fさんは芦生の森やその周辺を主なフィールドと
して毎週、雨の時も豪雪の時も永年観察調査を続けていらっしゃる本当にすごい方だと思う。
   
ダンコウバイ   タニウツギ
   
アキノキリンソウ  ゼンマイ 
   
 コバノガマズミ  ツリバナ
   
 クマシデ  シナノキ
MICKEYの嫌いなクサギでは、少し花が残っているのを見つけては、その花の香りのす
ばらしさや、実の美しい姿を見せてMICKEYのクサギに対する固定観念を一掃。
里の人達のクサギの食べ方も丁寧に教えて下さった。
「すごい知識で驚きの連続よね!クサギも見る目が変わったわ!」とMICKEYも笑顔。

Fさんの観察記録はネットで13年以上の読者の僕も、この前の芦生研究林でのボランテ
ィアでお会いした以外では今日が初めての同行山行となる。
「13年位前にFさんが観察会の先生として歩かれていた○○クラブにメールを出して
Fさんともっと早くから長くご一緒させて頂いていたら、もっと知識もついていたでしょうけど。
木を見て森を見ずのことわざの逆で、森や山を見ても木や草花の生態をしっかり観察せず
の「綺麗な花だね~」「「立派な木だね~」で終わっていることが多い夫婦でしたから・・・。
草花の名前のみならずその四季折々の生態も知らないことだらけで、やっと気づき始めた
幼稚園児そのものなんです。覚えが悪くてすみません」と、Fさんに話しながら歩く。

「今年は木の実も豊作なんですよ」と、木や草に成っている実が甘いか、苦いか、さすよ
うに痛い味か、など味のこともFさんは良くご存じ。みんなも口に入れて確かめる。
「クワ-ッ、これ刺すような痛い味!」とコウライナンテンショウ。
Hさんも「これはキツイですね!」と、口直しにHさんからキャンディーが配られた。
   
   ヤマジノホトトギス
   
 ケケンポナシ クサギ 
   
クサギ   サワフタギ
集落の道ばたから林道沿いを進み、タヌキのため糞を観察しつつ進む。

今日の風は冷たくて、登る際にこの冷たい風は、僕とMICKEYにはナメクジのような登りにならずに
救いの風となった。

オオカメノキがあった。ウサギの耳、カモシカのひずめ、と覚えた冬芽があった。

サルナシの実が沢山なっている。うちの庭にも日よけのために園芸種を植えているが、それよりも
実がやや大きくてしかもメチャクチャ甘いではないか。「うちのより美味しいね!」とMICKEY。

今年はFさんにもお話しして、庭のサルナシの1本の実を摘果して大きく育てようとしたが、摘果しな
かった木と大きさも変わらなかったことを報告した。キウイの実のようにはいかないものだ。
今年は庭のキウイも豊作で100個以上、沢山実がぶら下がっていてご近所からも注目されている。
   
 熊だな エゾユズリハ 
   
 シロモジ  ウラジロノキ
栗の抜け殻が沢山落ちている。Fさんが上を見上げると「熊だな」があった。
幹には熊の爪痕。熊はもういなかったが、このあともまた熊だなが数カ所あった。
百里ヶ岳(931.3m)が見える。「私も行ったよね、あの山」とめずらしく覚えているMICKEY。
MICKEYと行ったのは2004年6月で9年前。僕はその4年後の2008年11月にも行っている。 
   
 ツキヨタケ  ツキヨタケ
   
 ツキヨタケ クリタケ 
   
 ツノハシバミ 熊だな 
HさんやFさんからミカンを頂いた。じっとしていると寒いくらいの冷たい風だ。
うらやましいくらい脂肪が多くないHさんやFさんは「ううっ、寒いな~」と。
「えっ、寒いですか。丁度良いです。」と言う脂肪が多い僕やMICKEYを見て笑うTさん。
   
 アズキナシ 熊だな 
   
 シロヨメナ  ミヤマフユイチゴ
「この木、良く覚えているわ」とここを歩いたことがあるので、特徴ある木をみたMICKEY。
下山開始する。トリカブトが多い少し荒れて開けたところを過ぎると、なかなか良いルートだ。
「良い感じね」とMICKEY。

エゾユズリハの葉痕の「妖精さんのかお」とかミヤマウズラは「西洋のお化けみたい」とか
Hさんの説明にMICKEYは「うわっ、ホントだ!」と笑っている。楽しそうにいろいろ後ろで
話しているようだ。
17:00
下山完了。
下山するまでに山中で、単独男性2名と夫婦1組とすれ違ったのみの静かな観察山行。

本当にFさんには、お世話になった一日だった。またHさんも、Fさんとよく草木の観察をして
歩き、しっかり観察して美しい絵を描いているだけに、すごく良く知っているのがわかった。

Tさんも僕も、メモをとるので精一杯。MICKEYは見聞きするだけで精一杯の超満腹観察会。
下山地にデポしてあったFさんの車で、集合地へともどり、17:30に皆さんとお別れした。

しかし、思わぬ大渋滞。Fさんに教えて頂いた裏道で名神に乗り、途中の桂川PAでゆっくり寝て
22時過ぎの割引が聞く時間に高速から下りて、22時40分帰宅完了。
本日撮った植物の写真は100種類を越えていた。

Fさん、本当にありがとうございました。
なによりも元気になりつつある森を見られたのが嬉しかったです!自然に笑顔が出ました!
そしてHさん、Tさんもありがとうございました。

来週末の25日(金)~27日(日)は「 第23回 芦生研究林・公開講座」がある。
久々にMICKEYと申し込んだ。しっかり勉強してこよう。今日ご一緒したHさんも出席される。


        【某調査区でナツエビネの株に実施した今日の作業】

1.調査区から100m以上離れた、日当たりの良い斜面に群生しているイワヒメワラビを
  5人で必要数刈る。
(他の種類のワラビ等のシダ類と間違えないように!)

2.8月の調査区での調査に続いて、ナツエビネの株横に立ててある1~17の番号串に
  従い、それぞれの株の葉の状況(長さ、巾、はみ痕など)を計測する。
(Fさん、Hさん)
   ・・・・これが細かくて根気のいる作業で、HさんとFさんの息のあった作業。

3.刈り取ったイワヒメワラビを縦5本横5本にして編み込み、1枚のイワヒメワラビシートの
  ようにする。 
  「2」の計測が終わった株から、Fさんに指定された通りに、10本を編み込んだ
  イワヒメワラビで覆う株、5本のイワヒメワラビをかぶせる株、なにもしない株に
  分けて調査図の1~17番の株にかぶせていく。
(Tさん、MICKEY、矢問) 
   ・・・・なかなか編み込みにくいがTさんも僕も頑張る。流石にMICKEYは編むのが速い!
    ◎10本編み込み被せ ・・・1.2.7.10.12.16
    △ 5本被せ ・・・・・・・・・・・3.8.9.11.13.15
    ×そのまま放置株 ・・・・・・4.5.6.14.17

これから鹿の餌になる草が減る季節。ナツエビネは食べられてしまうのか、はたまた食べられずに
守ら積雪期を越えて、来年の春を迎えられるのか。また花期には可憐な花を咲かせてほしい。

★★ 貴重な植物の株を見つけては盗掘する人が今も絶えない。実に残念なことだ。
   自分の手元に持ち帰ろうとせず、自然の中に置いておくように心がけて欲しい。
   貴重な花を持ち帰る人は、花盗人、花泥棒であることの自覚に欠ける人に他ならない。
   
   
株の横に番号串   イワヒメワラビをかぶせる
             【イワヒメワラビ Q&A】

Q1.イワヒメワラビをかぶせることにより、蒸れたり光合成への影響はないか
  A.イワヒメワラビは刈り取ると直ぐに枯れるので、ナツエビネへの影響はすくないと
    思われる

Q2.イワヒメワラビの胞子が落ちて発芽し、成長するのではないか
  A.イワヒメワラビとナツエビネでは生育環境(光環境)が異なる。ナツエビネが生息
    しているような暗い環境ではイワヒメワラビが生育できない

Q3.イワヒメワラビを少し離れた別の場所から運び込むことには問題ないか
  A.イワヒメワラビの生育地は近くにいくらでもあり、また、彼らの出す胞子はかなりの
    距離を飛ぶので、遺伝的な撹乱を起こすことはないと思われる
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