沢【台高】木屋谷川 本谷から国見山・明神平


秋色の沢は美しく、心もなごむが、木枯らし1号の寒さは厳しかった。
落ち葉の絨毯に下山路がわかりにくく日暮れとの戦いとなった遡行であった。

【日 程】2002年10月27日(日曜日)(前夜発)
【遡 行】台高・木屋谷川 本谷から国見山・明神平
【コース】橋−ワサビ谷出合−奥山谷出合−鉄砲谷出合
      −稜線−国見山1418.7m −明神平−奥山谷沿い下山
      −木屋谷本谷右岸登山道−橋
【メンバー】矢問、MICKEY
23時30分過ぎに家を出た。遅い出発。
166号高見トンネル東出口横のパーキングエリアで午前2時から仮眠。

6時起床。166号をさらに東へ進む。木梶トンネルすぐ手前を右に下りる。
橋の所に立て看板。今日はマラソンがあって12時から14時が通行止めらしい。
ハンターへの注意もある。右の橋を渡り直進。あまご養殖場・釣り堀のところを
右にぐいっと入るのが小屋谷林道だ。峠の加杖坂トンネルをこえて最後の2キロ
程はダートになる。入渓点のガードレールの白い橋の手前は明神平への登山道で
もあり、2台ほど駐車可。2人の登山者が先に到着して車内で朝食中。
僕らは橋を渡ったところのふくらみに駐車して準備。
沢へはこちらから下りて入渓できる。

7:20
いざ遡行開始。気温6度。それに今年の「木枯らし1号」とのことで寒気の風が
きつく、耳がちぎれそう。僕は濡れないようにと飛び石で進む。MICKEYは落ち葉
で滑ってもう濡れてる。開き直ってジャバジャバと。「うわ〜足がしびれる!
この前の石ケ平谷とは大違いの水温!」と叫んでいる(^^;)
「谷間にこんなにきつい風は初めてやなぁ。夏ならこの寒風も嬉しいけど」
「枯れ葉がどんどん飛んできて石の上に積もるね。これがまた滑る〜(;_;)」
8:30
小滝をいくつか通過するとゴルジュ。ここにも小滝が3つほど有る。10mのナメを
過ぎると2mの滝。これを右から高巻きしてこえるのだが、たった2mの滝
相当高巻いて沢へ下りないとならず、時間を食いそう。ホントはもっと低い位置
から巻けるのかもしれないが、落ち葉の絨毯で全くわからない。次の細いルン
ゼを下って下りることにした。岩盤に落ち葉、泥土斜面に落ち葉で滑る滑る。
沢へ下りる最後は安全策でロープを出して懸垂下降した。
たった2mの滝を巻くのに45分近くかかってしまった(^^;)
たった2mの滝なのに・・・ 懸垂も上手くなったMICKEY
9:25
左にワサビ谷の15mの滝が見える。
ワサビ谷出合まで60分のところを倍かかっている(^^;)
15mの斜瀑は右を登り次の淵は左を巻く。
風が冷たい〜 いよいよ12mの直瀑
9:45
小滝をいくつか過ぎると、12mの直瀑。「スゴイねぇ」と見ているMICKEY。
どこを巻くのやらと右を見る僕。遡行図は釜の手前から巻いている。滝のすぐ右、
そのとなり、またそのとなりにルンゼがある。すぐ右のが登れれば簡単に登れる
のに最初が滑る岩。それに完全に濡れる。手前から3つ目の所から巻くことにす
る。ここでも釜のずっと手前ではない。どんどんMICKEYが先行して登る。なかな
かの斜面で手も無くて怖いところが多い。「MICKEY、ここと違うよ。こんなに高
巻いたらあの滝の次の8m滝の釜の所に下りられない。」下を見ると男女2人連
れの沢屋さんが追いついて来た。かれらはさらに滝より遠い位置から高巻きする
ようでどんどん高度を上げていく。それを見たMICKEYは「あの人達も登ってるし
合ってると思うから先に行くよ」「どう見ても違う。地形図でも合わない。僕は
一端下りて滝のすぐ横から2つ目のルンゼを登って偵察してくるから待ってろ」
とMICKEYを置いて元の沢へと下る。

2つ目のルンゼを登る。落ち葉と泥土でめちゃくちゃ滑る。20mほど登ったと
ころの大木で「1つ目のルンゼを登れれば簡単だけど・・」と滝の方を見る。
この大木から左へ2カ所次のルンゼにつながるバンドがあるが、途中でビレーポ
イントを作らないと怖い。佐野さんや小山伏さんならどうやって行くんだろう・・
と考えながら空身で試すもビビリが入って進めない(^^;)ふと10m下の「し」の字型
に張り出した木の横にバンドが見える。これを回り込めれば1つ目のルンゼの
上部に行けるはずだが、ここからでは見えない。一度そこまでロープを大木に回
して降りて見に行く。行けそうな感じだが、バンドがとても狭い。

MICKEYに「こっちに絞り込もう」と呼んだ。MICKEYも大木までロープに伝って登
った。「よくこんな滑るところを2回も3回も登ったり下りたりしたね」と。
「僕、必死なんです!(^^)」バンドを3カ所説明する。
「こんなの無理。次の夏の課題として敗退しようよ・・」とMICKEYは疲れ果てて
いる。「あの10m下のしの字に張り出した木の横を回り込めればあの滝の上に
出られるはず
。一度また10m下りて空身で偵察するわ〜」と下りていき、ザック
を置いてこわごわ登るが、それほど怖くもなかった。
回り込んで見ると「やった!行ける行ける」と元に戻り上にいるMICKEYを呼ぶ。
ロープを回収して再度登る。高巻いていったはずの2人連れも行き詰まったのか
はるか上から下りてきているのが見えた。「こっちがルートですよ〜。行けます
よ〜」と叫んだら男性が大きな○マークを腕で作って頭上で示して返事。
僕らの後ろを来たのか敗退されたのか、その後会わなかったので不明。

僕らはバンドを回り込んで12mの滝の上に出られた。ルート確定に1時間以上
もかかった。しかし、2人とも苦しんだだけスゴイ達成感を持てた。
みーとさんの情報によると滝の左にロープがぶら下がっており、案外簡単に登れる
とか・・・もっと早く知っていれば良かった(^^;)
このゴルジュは巻くつもりが 腰まで浸かってMICKEYは通過
11:00
次の8mの斜瀑は左を登り深い釜をもつ3mの滝も左から。次の淵を巻かずに
MICKEYは「これの方が速い」と腰まで浸かって通過。それを写真で撮っていたら
滑って横向きに転けて首から下までずぶぬれ(;_;)「ええい、もう濡れついでに
僕も巻かずに行くぞ〜。ギェ〜ッ、水が冷たすぎる〜」と叫ぶ僕。
右から上部の岩間を登る3m
11:05
次の3mの滝は右からだが、岩の中に入り込んで岩のハングをこえる。ザックを
付けて登ったら反転出来ずに立ち往生。ザックを下で待つMICKEYに渡し、空身で
反転し登り切れた。僕のザックをシュリンゲの連結であげてMICKEYのザックもあ
げて、MICKEYも空身で登らせたが反転や体重移動に苦労していた。
「これ難しかった〜」とMICKEY。続く淵は左を行く。
頭上5mあたりに朽ちた梯子が沢を横切っている。

11:20
「登山者が右岸の上の方に3人見える」とMICKEY。左に奥山谷を見てさらに進む
と大きな二俣「左が鉄砲谷としたら4段30mの滝が見えないのが変だが・・
ちょっと早すぎるような・・」と思いつつ、右股に入ってしまった。
「5mの滝が有るか?」と先に行くMICKEYに叫ぶも「無いよ」と返事。
磁石は北を指している「おかしい・・」
大木の刺さる6mの滝が現れ(11:55着)右を登る。
次に出た滝は登れない。右斜面へ逃げるとロープが30mほど上へと張ってある。
「高巻き用かな」と登るMICKEY。上に登って西に谷が向かっていないとおかしい
と思っているとさらに北に向かう。「MICKEYこれは間違ってる。これは鉄砲谷の
手前の右枝沢や!」と気づき二俣(あとでふり返ると遡行図では右に枝沢のよう
にあるが、ここは3:2の二俣状である)へ戻る。30分のロス。
泥土斜面+落ち葉は滑る。滑って転んで真っ黒け(;_;)。
これが鉄砲谷 落ち葉で滑る滑る 「頑張って登れよ〜」
12:20
出合からナメを過ぎ、二段15mを右から登り暫く行くと左からこれこそ「鉄砲
谷」と思える4段30mの滝が見えた。ここまで3時間のはずが5時間もかかっ
ている。寒風がきつく、寒い。カッパを着た。それでも2人とも震えが止まらな
い。「うどん作って暖まろう」と山頂で予定していた昼食をとることにした。
「う〜温かい(^^)。体にしみるうどんづゆ」
「うどんは、あったまるわ〜」 いよいよ平流地帯
ここから先は小滝が続く。4mの斜瀑を過ぎ、左からの3mの滝を持つ枝谷を過
ぎた。「ここからはずっと平流であと1時間で稜線に出られる」綺麗な落ち葉の
秋色の沢筋は綺麗。でも時間が心配。鹿があちこちにいる。「ここから平凡な沢
を詰め切って稜線出て南に戻って国見山に行くより、直接国見山に突き上げよう
よ」とMICKEY。
「寒いしそうしよう。地形図ではもう少し行って西に進路をとると台地状の所に
出て、そのまま進んで稜線にでると、すこし南に戻るだけで国見山。GPSでの緯
度経度も確認できた。それで行こう」と。
秋色が綺麗な台地帯 国見山の山頂 1418.7m
14:10
登りもそれほどきつくなく、綺麗な台地(13:50着)を過ぎて国見山へ。
耳がちぎれそうに風が冷たい。明神平方面から若い男性2名が登って来てそのま
ま止まらず北へと縦走路を進んでいった。
僕らは写真を撮ってから水無山(14:30着)へ。
山頂にかけてあるプレート3枚の高度が全部バラバラ(^^;)
「明神平が見えたよ〜」 この前と違いほとんど葉が落ちている
14:45
明神平に着いたときはもう人っ子一人いない。天理大小屋横で登山靴に履き替え
て奥山谷を下降。最初はテープが多いが、すぐに少なくなり、ホントに欲しいと
ころでは全く紅葉に同化してくすんだ赤や黄色のテープは目につかない(;_;)
人1人通れるような踏み跡も落ち葉の厚い絨毯でほとんどわからない。地形図では
右岸に登山道のはずの所も左岸にあったり地図とは違う。崩壊しているところも
あり、なかなかサッサと進めない。谷中ではGPSも衛星が捕まらず、威力を出せない。
「しかし、登山道がわからなくてもここを進みきれば、朝登った沢筋にぶつかりそれを
下れば出発点」と、思いつつも、もう16時。17時過ぎの日暮れが気にかかる。
途中でゴルジュ。「ここは沢靴に履き替えて沢中を進もう」とジャバジャバ。
身が切れるような水温も日暮れ時間が気になる2人にはなんでも無かったが、
冷えと疲れは2人とも足が何度も攣りかけマッサージ。「MICKEY、頭上に朽ちかけた
はしご橋が架かってる!」
と周囲を探す。右岸に赤テープや白テープがありロープが
垂れ下がっている。デジカメで11:20にここの風景を撮っている!
これが朝11:20に写した梯子橋
右岸(左上)に登山道がある!

「これが登山道への登りに違いない」と登ると踏み跡。「行ける!」と焦ってた2人に
やっと笑顔。しかし踏み跡は何度も分岐があり何本もあったり上に行ってる道や下に
行ってるのやら、コンパスと地形図で確認しっぱなし。
「高度計ではあと200mほど。頑張ろう!」小走り出来るような道ではない廃道のよう
な細い踏み跡道。
「あっ、入渓点の橋が見えたよ!」とMICKEYが叫ぶ。
「おおっ、闇下ギリギリセーフ。よかった〜(^^)v」
下山路にある滝 これも下山路にあった滝
17:05
下山完了\(^o^)/ 明神平から2時間もかかってしまった。
まだなんとか明るいうちに下りられた。固い握手(^^)。嬉しかった。

着替えたりしているウチに17時30分。沢筋辺りは真っ暗になった。
犬を乗せたハンターの軽トラックも林道を下りてきた。

「心配かけたなぁ。ゴメン。あの2つの滝のルート取りと、下山路は落ち葉の絨
毯でかすかな踏み跡はわからないし、紅葉でのテープ色同化でホントに苦戦した
なぁ。」「敗退もせずに、無事に帰れてホントに良かった。けど焦ったね」暖房
で体を温めつつ、帰路を急いだ。20時30分自宅到着
今回は夕食を待ってる息子達にも心配をかけてしまった。

この沢は、水も美しい。詰めあがるところの自然林も綺麗だ。下山路の踏み跡が
分かりやすい夏場がやはりおすすめかな(^^;)
この1つ前の記録は「台高・石ケ平谷から薊岳」の遡行記録です