【若狭】野坂山地・大御影山から大日

ブナの殿堂・ブナの回廊・癒しのブナ林ルートを歩く


【山 域】 野坂山地 大御影山から大日
【日 時】 2006年6月17日(土)
【メンバー】 矢問、MICKEY
【コース】 能登又林道・白谷橋・林道分岐点−白谷登山口−大御影山(950.1m)
       −三重嶽分岐−大日(750.9m)−大日登山口−林道分岐点

「ブナの殿堂とも言うべきルートで、台高でも奥美濃でも、これだけ長い時間続くブナ林
はちょっとなく、これほどたくさんのブナを見たのは初めてだ」という山日和さんのレポ
ート。それは5月の末だった。「そうかそうか、そんなにええとこなんか」と洞吹さんが
1週間後に行かれ、「ホンマにすごいブナの回廊だよ!是非行ってみたらいいよ」という。
今日は沢登りに行く予定だったが、ブナ林をよく知るお二人が絶賛するこのルート。
「こりゃ、行かにゃならぬ!」と僕。「行ってみたいね」とMICKEY。今日はここに変更!

高速道路を使って時計と逆回りで行くより、いつもの美山から名田庄を抜けて行くと50km
の短縮と高速代の節約になる。涼しいウチに登りにかかりたいので、夜中2時過ぎに
出発。2002年8月に耳川・うつろ谷からの沢登りで赤坂山へ来たときに通った、県道
213号を美浜から新庄への道を走り、「渓流の里」最奥集落の松屋へ。粟柄谷へ向かう
左への林道(今日現在通行止め)と分かれて、橋を渡り右の能登又谷への林道に入る。

4:45
白谷橋を渡り少し先へ行くと、林道の分岐となる。
右へ折り返して登っていくところにある林道看板前のふくらみに駐車して、軽く朝食をし
つつ準備。「肌寒いね」と長袖を着る。僕らには丁度いい気温だ。

5:20
能登又谷の左岸の林道を歩き出す。左手の沢の水量は多い。2日前の大雨のせいだろう。
朝靄がかかっている。「本当に晴れるの?」とMICKEY。「晴れる」と僕。
右から出合う橋のかかる支流前の太い木にピンクのテープがあった。テープに字がある。
「05年7月・・・」のあとが読めない。これが地形図の破線の大日への道だが今は廃道と
なっているらしい。「天気が悪くなったら今日の下りに使うかもしれないからね」と僕。

続いて左からの支流が入る大きなトチの木の下に「大御影山 白谷登山口」の真新しい
標識があった。これが山日和さんと洞吹さんの言っている白谷ルートの入り口だ。

大御影山 白谷登山口 沢の徒渉は滑るので気をつけて
沢へと下りる。「う〜ん・・雨後で水量が多いなぁ」とあっちへウロウロこっちへウロウロと
浅い徒渉点探し。「この大きな倒木を使って渡るぞ」と倒木をつかみ岩に沿って渡る。
次と次は浅かったのでタタッと渡った「石がヌルヌルしていて滑るので気をつけろよ」。
その次の徒渉点はやや深い。「スパッツを付けよう」2〜3歩ならいつもこの手で行ける。
しばらくすると「大御影山→」という新しい道標があり、道は左岸の尾根腹を折り返しな
がら登りはじめる。「ううっ、あの嫌いな匂いだ」とMICKEY。左手にクサギがあった。
クサギはもちろん「臭木」の意味で、葉をもむとゴムの腐ったような独特の臭気が漂う。
MICKEYはこの匂いが嫌いでこの木があるだけで風の流れでこの匂いを敏感に感じる。

やがて尾根芯に登りつく。ここにも「大御影山→」という新しい道標がある。「尾根筋の
下部へも踏み跡が続くよ。沢の二俣付近からも登り口があるのかも知れないね。」
尾根は自然林とブナが雰囲気よく続き、期待が膨らむ。コアジサイも沢山咲いている。
熊の爪跡がクッキリついた木もある。新しい開拓ルートだからか、谷間からずっとピンク
のビニールテープのヒラヒラが続いている。山日和さんや洞吹さんが「うるさいくらい付
け過ぎているのではないか」というのがこれだな。商店街の大売り出し並についてる。
朝靄に朝日があたる ブナのお出迎え 首が痛くなるほど上を見る
6:30
幻想的な朝靄が薄くなり、朝日が差し込んできて、モヤに光がキラキラと美しい。
出てくるブナがだんだんと太く立派になってくる。トチも太くて立派だ。
左にザレた谷を見ながら進むと、いい雰囲気のゆったりとしたコバに着いた。
あたりには太いブナも何本もある。「休憩しよう」座ってあたりを見上げる。
「なんか気持ちがスーッとするね」「ホントだなぁ。5種類くらいの鳥の声が聞こえるね」
気持ちの良い休息場 鳥の声が朝の爽やかさを盛り上げる
休憩のあとに進む尾根斜面には、息を飲むような太いブナが林立している。1本1本見上
げては、ブナの木肌を手のひらでなでて、耳を当ててみる。「会えたね。ありがとう」
「スゴイね。このブナの林立、ステキよね〜」とMICKEYは感動の声をあげっぱなし。
実にすごい。本当に素晴らしいブナの森だ。顔が緩み、繰り返し見上げる首が痛くなる。
芦生でアシウスギに出会ったときとはまた違う「心の落ち着き」を感じる。「木の力」だ。
ブナ林もここまで続くと動きたくなくなるのは僕だけだろうか。何時間でも居たくなる。
確かに、山日和さんや洞吹さんが言うように、そうどこにでもあるようなものではない、
素晴らしいブナの森だ。ちらちら見える青空に映えて美しい。風も爽やかで涼しい。
ブナに囲まれいつまでもいたい 灌木帯になったらあと少しだ
ブナの森を過ぎると傾斜が緩み、潅木帯となる。左に、谷を挟んで見えるのがノロ尾とい
う尾根らしい。潅木帯は、けっこう太い木も切って、道が開削されている。それらの切り
口を見て「ちょっと切りすぎよね・・。この木も一生懸命に雪にも耐えて生きているのに」
とMICKEY。ここまで切らなくても充分に通れるのは事実・・・。少々痛々しい。
子鹿が死んでる・・・と2mまで近づいたら「うわっ〜!!!」。爆睡していたのか子鹿
が飛び起きて逃げたのでこっちが驚いた。子鹿も驚いたから逃げたのだろうけど・・。
熊よけ鈴が鳴っていても、二人のしゃべり声が聞こえていても爆睡していたようだ。
カヤの原には爽やかな風 展望もなかなか良い
8:00
カヤの原に出た。青空が綺麗だ。良い展望が広がる。太陽はうまく雲に隠れていて涼しい。
「ここは炎天下だと辛いだろうね。今日は気持ちの良い爽やか天気でいいわ〜」とMICKEY。
向こうに見えるマイクロウェーブの反射板に向かってMICKEYはスピードアップ。

反射板の周囲でMICKEYがウロウロしている。「三角点がないよ・・・」と。
「三角点は向こうの道。途中に分岐があっただろ」と、山頂へ向かう。
大御影山 950.1m 山頂をタニウツギが飾る
8:15
大御影山 山頂。
タニウツギが咲いている。その木陰でコーヒーを沸かし休憩。
「3時間近く登っていたのにあれだけブナが続くと、登り道もまったく苦にならないね」。
ここから左手が大日へのルート ここは深く掘り込まれた道だ
8:45
大日へと出発。「白谷口→」と「ハゲノ谷→」という道標のある、展望のきくところまで
少し戻る。「新庄→」という小さなプレートもあるハゲノ谷という踏み跡へ。えらく掘り
こまれた道だ。「うわっ、またあの匂い」とMICKEYが顔をしかめるとクサギがあった。
ここからしばらくはクサギが多くあった。8月からの花の時期には綺麗だろうが・・・。
鹿も食べないバイケイソウやトリカブトも多い。このあたりも鹿の食害か・・・・。
MICKEYの嫌いなクサギの木 満開のタニウツギの花が多い
「←大御影山20分・大日→」という道標がある。右(北)を見ると赤テープが続いており
「←新庄」というプレートがぶら下がっている。能登又谷の林道に向かっていく尾根の
ようだ。
僕らは「大日」へ西へと県境尾根を進む。タニウツギの花が多い。雪圧に耐えて生き抜い
てきた曲がりくねった老木が多くなってきた。2箇所のヌタ場の水たまりには無数のオタ
マジャクシがいる。またまた素晴らしいブナ林が続く。「あ〜素晴らしい〜」
MICKEYのスピードがあがりもう見えない。静かなブナ林を1人で楽しむのも良しだ。
雪圧で曲がっている木が多い 「これも立派よね」 「まだまだ続くブナの森」
9:40
三重嶽への分岐。MICKEYが待っていた。「三重嶽に行くの?」「行かない。大日方面」
ここからのブナ林もスゴイ。巨木も点在していて見上げる首がうれしく痛くなる。
「あなたも立派ね」 「ホントに立派だわ」 「素晴らしいね」
滋賀県の「休猟区」のプレートがある。「鳥獣の保護及び狩猟の適正化に関する法律」に
基づき、期間限定で猟の許可を休止することによって狩猟鳥獣の自然繁殖を促進し、今後
の狩猟の持続性を確保する目的で設定される区域のことで、都道府県知事が3年以内の期
間を定めて設定することができる。鳥獣による農林業被害が増大している地域では、休猟
区の設定にあたり地元の協力を得にくくなっているのだが、この山域では何を保護しよう
としているのだろうか。鹿なら多すぎるし鹿害で山野草の減少により、土のむき出しはブナ林
にも悪影響しそうだし・・・。鹿と猪の足跡はここまでにも沢山あった。

立派なブナの木の背丈上部に名前等が幾つかナイフのような物で彫り込まれている。
いたずらなのか登山者の記念なのか古い物だが痛々しい。「ブナが泣いているよ」
ブナの回廊はまだまだ続く 「この尾根の主ですか」 1本1本見上げてしまう
10:10
「能登郷」「電波塔跡」「大御影山」の道標がある分岐。僕たちは大日へと「電波塔跡」
方面へ進む。ここからのブナ林も巨木はないものの素晴らしい。
「電波塔跡」方面へ進む 「こういうブナ林も大好きよ」
「ブナ林で歩くときの歌って知ってる?洞吹さんのレポで教えてもらったんだ」と僕。
「えっ、そんな歌あるの?」「♪ブナブナ、コブナ。こいつに決めた。ブー♪」と歌うと、
MICKEYの冷たい視線を感じた。
ブナの森を抜け、ロボットが立っているような形の二本の送電鉄塔を過ぎて、再びブナの
森に入ると大日はすぐだ。
登ってきた尾根筋が見える 大日・750.9m
10:25
大日。「大日岳 750.87m」と記された標識杭と、そのそばに三角点がある。
地形図には山名はなくこの標識杭がないと三角点も見落としやすいピークだ。

僕らの進む北のほうで熊よけ鈴が聞こえる。男性がそこに点在する岩の回りでうろうろし
ている。「大日の山頂が分からないのです」とのこと。「この先ですよ」と教える。
滋賀からの男性で、能登郷のほうから登る予定が林道が崩れていて鉄板が危なそうで、
僕が車を停めた地点まで来て僕らの下る方の登山口から登ってきたという。
僕の車の他に、この男性の滋賀ナンバー、そして奈良ナンバーの車があったという。
奈良ナンバーの人には僕もこの男性も会っていない。
テーブルに敷く厚手の透明シートで作った太ももまでの自作スパッツを蛇よけに履いてお
られる。地形図で僕の来たルートを説明。男性はナカニシヤ本の地図コピーのみらしい。
男性の首からぶら下がるメロン大の布袋にはピンクのテープが満タン。「蛇もコワイし、
帰路が分からなくなるのも怖いので、GPSのような新式ではないけど旧式ながら登りな
がら付けて歩いてるので安心」とのこと。「僕らが登ってきた大御影山までのルートのピン
クテープもあなたが付けたのですか?」と伺うと「そのルートはまったく知らないですよ」と。
滋賀と福井の県境の上谷山や三国岳にも行きたいとおっしゃっていた。

「三十三間山」「大御影山」などのほとんど字が消えた道標がある。
「ここらで早い昼食にするか?」「今日はお腹がそれほど空かないね」「同じく」
下山してから食べることにした。ブナの殿堂、ブナの回廊ともお別れだ・・・。

振り向いて「また秋に来るからね」とMICKEYが言っている。
今日の癒しのブナ林ルート「秋も良さそうなルートだな」是非また訪れたいものだ。
癒しのブナ林と分かれ巡視路を下る
10:40
下山路をすすむ。東進の廃道らしい波線の道との分岐でどちらに進もうかと悩む。
山日和さんのレポには、巡視路はあまり面白くない下山路のように記されていたし・・・。
「山日和さんの足跡を追うことにしようよ」のMICKEYの一言で決定。巡視路を下る。

急に今までの気温とは違う生暖かい風になった。右手には登ってきた尾根が見える。
木陰で暑くないのが救いだ。先ほど会った滋賀の男性のピンクのヒラヒラがずっとある。
途中で沢を横切ると沢沿いに下るルートとなる。だんだんと自然林から植林帯に変わり
小滝もある沢筋の道は薄暗くなってくる。
林道・登山口に出た
11:35
林道に出た。「お昼前に下りちゃえたね」「癒しのブナ林で満腹ってところかな」
プレートを見ると大御影山、大日、三十三間山の登山口でもあるようだ。
コンクリートの林道を下る。蛇がひなたぼっこをしていた。未舗装になるともうすぐだ。

11:50
車の駐車地点に到着。滋賀の男性が言っていたように僕の他に二台の車。
涼しい沢筋の風を車中にとりこみながら林道をのんびり走り美浜へ向かう。

空き地で、ラーメンを作り満腹。昨年5月の今古川の沢登りの帰りに行った「きららの湯」
で汗を流し(たった4人のガラガラ)、名田庄の道の駅で車中仮眠。雨が降り出した。
車での帰路途中で雨が降り始めるとはラッキー。涼しく帰れる。


実に素晴らしいブナの森を歩くことができた。秋の紅葉の頃も一段と美しいに違いない。
芦生とはまた違う雰囲気の、癒しのブナの森を楽しめて本当に良かった。

山日和さん、洞吹さん、本当に素晴らしいルート所を教えていただき感謝です!
本日の「白谷−大御影山−大日」癒しのブナ林ルート
この1つ前の記録は「若狭・多田川 蛇谷から多田ケ岳」の記録です