【奥越】残雪の銀杏峯


【山 域】 福井県 銀杏峯(げなんぽ)
【日 時】 2008年4月12日(土)
【メンバー】ナイトン、矢問
【コース】 宝慶寺−夏道登山口−Ca1044m−銀杏峯(1440.7m)
      −前山(P1150m)−林道−夏道登山口
19時、大学院の研究室にいるナイトンに「福井県の山に今夜から行かないか」とメール。
「いく!今から帰る」と返事が来た。8日に来春の就職も内定し、ナイトンも健康管理開始。
ナイトンとは2007年1月に、奈良の玉置山関西百名山を達成した時以来の山行だ。

ナイトンが帰宅し、21時半に福井県に向けて高速道路利用で出発。
交代交代で運転し深夜1時半に宝慶寺いこいの森に到着。登山届けボックス横で車中泊。
ナイトンはX−トレイルでの車中泊は初めて。「こりゃ、なかなか快適やね!」

5時に起床。「意外とよく寝られた」とナイトン。朝食にする。
小葉谷西の夏道登山口までは林道に雪が無いようなので、久々の山行のナイトンも部子山
と銀杏峯の2座狙える夏道を、山頂での大展望を期待して行くことにした。

朝食を済ませて、登山届けを出し、夏道(小葉谷西コース)登山口まで車で移動。
まだこの先もずっと林道は除雪が終わっているのが見える。
今日は誰もいない。「晴れの天気予報だったけど、山の上部はガスが濃いなぁ」
鳥居をくぐって登山開始 「ヤブが邪魔だなぁ」
5:50
古い鳥居をくぐって登山開始。雪はまばら。右手の尾根筋への取り付きはヤブがうるさい。
尾根道はあるきやすい 「林道にでたよ」
尾根に乗ると少し歩きやすくなった。20分ほど登ってロープのある斜面を過ぎると再度
先ほどの林道に出合う。正面の斜面は急すぎて登れない。

6:15
林道の20mほど左に古びた登山口の標識が見えた。
その前の斜面の雪はジグザクに登れば行けそう。「ここから尾根に取り付こう」
「えっ、こんなところ登れるの?」「行ける行ける。」
林道から尾根に取り付く 「下はガスが晴れてるね」
5分ほど登ると雪間に石垣が見える。
雪を掘ると「鉱山跡石垣・海抜約850m」と説明板があった。
「雪の登りは楽しいぞ」 「今度は先に行くよ」
ブナの木の地点 だんだん急登になってきた
7:10
「ブナの木・海抜約1100m」の説明板のあるブナの木地点に着いた。
「六根清浄宝慶寺」と書かれた古い板が木についている。
ガスは先ほどより濃くなってきた。
「これ登るの?」とナイトン。先を見るとなかなかの急登。尾根は細くなっている。
「メチャ急や〜!!」 「よし、先に行ってみる」
「ステップを切るから慎重に登ろう」進めば進むほど急登になってくる。バランスを崩し
て左に落ちると谷間へとそのまま滑落するし、右手に出ている木々は絡み合い雪圧で下を
向いているので体を進めにくい。「まだ木のある方がましじゃない」「凄く腕力がいるぞ。
腕で体全体を上げていくオラウータン登りをするか・・」木々の絡みでザックがひっかか
りなかなか登りにくいが、なんとか通過できた。さらに急登が続く。ピッケルを車に置いて
きたのが悔やまれた。アイゼンは履かなくても3度ほどけり込めばステップが作れる。
「バランスを崩すなよ。ストックとで3点確保で着実に焦らず登れよ」「了解、了解」
「ガスが濃くなってきたね」 「稜線はガスの中やね・・」
7:45
「此より急登要注意・海抜約1200m」の説明板。
「なに〜、今までよりさらに急登があるって言うのか!「帰路はこのルートやめようよ」と
ナイトン。「ホンマやなぁ。ピッケル無しでは危険やなぁ。帰路は名松新道の方へ下ろう」
「さっきの急登をステップを切りながら登るのは大変だろうなぁ、と後ろから見てた」
「しんどかったわ〜」

説明板とは裏腹に、1200m地点に来るまでの急登の方が断然きつかったので、それほど
急登とは思わなかった。ステップを切れば登れる。風がきつくなってきた。ガスと風で体温が
奪われる。「寒くないか」「大丈夫。寒くない」僕だけ上着を着た。

8:30
「此より急下り要注意・海抜約1300m」の説明板。「この看板があるということは、もう急斜
面が終わったと言うことだな」「ホッとした〜」
さらにガスが濃くなって周囲が見えなくなってきた。傾斜はゆるみ楽になる。
ガスがどんどん濃くなる。

晴れていれば、尾根を西へ進み部子山に登ってから銀杏峯の山頂を踏んで下山する予定だ
ったが、展望なしではナイトンもつまらないだろう。今日は銀杏峯だけにすることにした。

銀杏峯へと東に進路をとる。「これがホワイトアウトか」とナイトン。「これに雪が降るとさらに
分からなくなるよ。今日はガスだけだからまだマシ」東へ歩いているつもりが、どうも地形的
におかしい。どうして右手に落ち込んだ地形が???コンパスを見ると北へと進んでいる。
「一度元の位置へ戻ろう」「大雪原であるきやすいなぁ。どこをあるいているのかさっぱり見え
ないけどスキー場みたいに広いなぁ!」シルバーコンパスを進路へとセットし、山頂を目指す。
「銀杏峯山頂! 1440.7m」 「温かいラーメンがウマイ!」
9:00
銀杏峯。周囲よりポコッと高い山頂部の雪はとけて無くなっている。
ガスで祠のお地蔵さんも寒そう。ナイトンと握手。ほんの少しガスがマシになったが、
すっきりと晴れるような様子ではない。「あ〜、残念や〜。晴れて欲しかったなぁ」とい
うと「雪の山に登れて僕は満足や」とナイトン。昼食には早すぎるが、寒いのでラーメン
を食べることにした。「寒いからツェルトを張ろうか」「「これくらいの寒さは問題なし」と
ナイトン。白ガスストーブのポンピングがスコスコ・・・「ウソやろ」摩擦がきかない。
何度もポンピングしてなんとか湯も沸かせそうな状態になりホッとした。

ラーメンができた。「う〜ん、体が温まるなぁ。下山したら福井の蕎麦を食べるぞ〜」
「山ではシャリバテにならないように行動食などちゃんと食べるから痩せないよなぁ」と
ダイエットしたい二人の会話。二人のザックには、まだおにぎりなどが入っている。
「雪道の下りは楽しいな〜」 右は崩れてるので注意!
9:50
下山開始。まだガスがありルート取りがしにくい。なにかポールが見えるので行ってみる。
その横に古い道標があるのをナイトンが見つけた。「ふれあいの森」と示す方向を見ても
雪原なのでどこがどこなのか道らしくはない。
気持ちの良いブナ林 ザクザクザクと下る
しかしこちらはメインルート。沢山の古い足跡の痕跡が雪にうっすらと残っている。
鹿やキツネの足跡もある。ガスがマシになってきて尾根筋のブナ林が見えだした。
「うわ〜、ええ尾根やなぁ」と僕。「雪の下りはザクザクと楽に下れて楽しいなぁ」と
ナイトン。ガスが薄くなり下の町並みも見えだした。
「あれっ、人がいるよ」とナイトン。これから行く前山の山頂に2人いるようだ。
前山への登り 前山から西進開始
10:30
前山(P1150m)。お二人に会釈。彼らはこれから銀杏峯を登るようだ。
僕らはここからふれあいの森に下らず、車の駐車地点を目指すため、西の尾根を進み、
尾根通りに北北西に進み林道に下りようと考えた。Ca1050mあたりまでは快適に雪面を
下っていたが、そのあたりから尾根筋は木々が邪魔であるきづらくなり、尾根の南側の
雪がしっかり残っている斜面を西へと進んだ。
尾根の南側斜面を下る 計画していた尾根へトラバース戻り
900m地点から斜面が急になり、つかむ木も少なくなる。860mあたりまで持参した
10mロープを何度か駆使して下ったが、あと25mほどで林道というところでどうにも
進めない斜面となった。トラバースもできない・・。
周囲の林道への斜面をナイトンと見るが30mほどはつかむ木もない急斜面。
もっと長いロープを持参していればなんとでもなったのに・・・。
直ぐ横に流れる細い沢沿いに行けそうにも見えるが、沢直前の斜面状態が読めない。

「もう足が震えて立ってられない」とキツイ斜面で木を持って待っているナイトンが言う。
「予定していた尾根まで登り返そう。尾根の末端は木が少しはあるはず。」「そこの斜面
にも木が無かったらどうするの・・・」「きっとあるさ。なければ前山まで戻るまで・・・」

尾根に登り返すにも下ってきた急斜面を今度はロープなしに、細い木の根やわずかな
出っ張りを頼りに15mほど斜度のややマシな地点まで登らないとならない。
6mほど上にいるナイトンが先に登っていった。後に僕が続いた。
「よくここをもどり登れたなぁ」「必死だったよ」

木々をつかんでトラバース気味に進み、北北西にのびる尾根筋へと乗った。
尾根筋も雪圧で細い木々や笹が下に向いており、つかみにくいし滑りやすい。
「つかむ木があってくれよ・・」と尾根の末端まで来た。「イテテテ」つかんだ木がタラ
の木でトゲだらけ。ナイトンにタラの木のルートを避けるように指示。ナイトンは革手袋
を履き手を保護した。林道直前までつかめそうな木が並んでいる。
最後の木にロープをつければ林道に下りられる!
ロープで林道へ着地する
12:00
林道に出た。「良かったなぁ」「どうなるかと思った」
「急がば回れ、とはよく言ったものだなぁ」とナイトン。「いやホンマ・・・」と頭をかく僕。

林道をテクテクと駐車地点まで歩く。途中のカーブに除雪車が置いてあった。
林道の斜面や林道沿いにはフキノトウがここかしこに沢山出ている。
まるでフキノトウの群生地帯だ。「めちゃくちゃあるなぁ。スゴイや」とナイトン。
幾つか天ぷらにと採っていたが「持ち帰っても喜ばないしなぁ・・」「どうして」とナイトン。
「MICKEYはほろ苦いので好きじゃないのさ。春のほろ苦さで季節の味なんだけどね」

「あっ、ストックがない」とナイトン。ヤブをこいでいるウチにどこかで落としたようだ。
ストックの紛失ぐらい何のことはない。怪我さえせず山を楽しめたならそれで良し。
山を見上げると山頂付近はまだガスに包まれている。「今日は天気予報がはずれたな」

12:20
駐車地点。ナイトンと握手。「無事戻れたな」「良かった良かった。そば食べるぞ〜」
持参したワカンやアイゼンは出番無しだった。

他に車が2台停まっていた。「どこから下りてきたのですか」と男性に尋ねられた。
「天気予報がはずれましたね」「まだ山の上はガスのようですね」

いこいの森の登山届けボックスの所に車が2台停まっていた。前山で会った人たちの
車かも知れない。今頃は銀杏峯に登っているのだろう。

「あっ宝んど(600円)」で汗を流し、そば好きナイトンと「福そば・陽明店」でそばを食べて
さらに美山駅近くの「天狗そば」でもこだわりの美味しいそばを食べて帰路についた。

福井ICから敦賀ICまで高速に乗り、そこからはいつも通り名田庄経由で帰る。
名田庄付近の道沿いや、堤防沿いの何キロにも及ぶ桜が満開でとても綺麗だった。
交代交代で運転し、往復510kmのナイトンとの久々の山行であった。19時帰宅。
本日のルート(赤:登り 青:下山路)
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