【芦生】芦生の森の防鹿ネット内継続観察調査とネット外調査区画作業

2012年08月11日(土) 芦生研究林 5月の作業後の植生調査・観察


昨年の降雪前の11月にボランティアの方々や、「芦生地域有害鳥獣対策協議会」の
「知ろう、守ろう芦生の森」の活動で、南丹市、美山町の役場からと芦生研究林事務所の
技術職員の皆さんや、高柳先生(京都大学大学院農学研究科)とともに「鹿防護ネット下げ
作業と植物の観察」をした。そして今年5月には去年下げたネットを上げる作業と調査区
を設定しイワヒメワラビの放置区と除去区にテープ区画して、ブナの芽生えとイワヒメワラビ
の関係を調査すべく、ブナの芽吹き子葉の横に串を刺して本数を記録した。

そして今回は、その調査区に再訪してイワヒメワラビの除去区と放置区でブナの芽吹きが
どのように育っているか、枯死しているかの観察と調査をする。

今日は、ふぉれすとさん(Sさん)も参加されるようだし、今日はボランティアの方も多いだろう。
家の辺りはもうしっかり雨が降っているが、芦生はどうだろう。芦生は昼からやや崩れる予報。
   
かやぶきの里は今日も静か   15日は鮎祭りが行われる
前回同様に、余裕を見て3時間前に家を出て美山の「茅葺きの里」でのんびりした。
「パラッ」と雨が降ったがすぐに止んだ。作業と調査が終わるまで崩れないといいのだが。
芦生ロードパークで鮎釣りをしている人達を見ていると、ふぉれすとさんの車が通過した。

9時20分に芦生研究林に到着。ネットではおしゃべりしているふぉれすとさんとご挨拶。
「ふぉれすとさん、僕とどこでお会いしました??」と伺うと09年の向山でとのこと。
丹波のたぬきさんのオフに参加されていたらしい。先日の堂倉の沢登りで捻挫されてまだ
足に少し痛みがあるらしく、今日はストック持参で頑張るとのこと。

今回のボランティアは16名で4人ずつ4班に別れ、各班の記録者に南丹町広域振興局
から各2名ずつつく。僕は1班、ふぉれすとさんは3班。前回ご一緒したTさんは4班、
前々回ご一緒した奈良からのHさんは僕と同じく1班。東山でもご一緒したSさんは3班。

活動総括としてフィールド科学教育研究センターの吉岡教授、協議会副会長の長野さん、
進行役には行政から村田さん。
調査総括として京都大学の高柳教授、芦生研究林技術長の境さん。
今日は長谷川芦生研究林長も同行される。

研究林のバスとライトバン2台で出発。移動中のバスの中でも村田さんから調査要領の
説明を受ける。長谷川研究林長や吉岡先生とも席が近かったので、森の変貌のお話しを
伺いつつ林道を地蔵峠のゲート前(林内)まで移動。「このあたりの斜面は昔はクサギが
沢山あったんだけどねぇ」と研究林長。「そうですね。クサギのニオイが苦手な妻は春先には
このあたりに一緒に来てくれなくなったんですよ。ホントにすっかり無くなりましたね・・・」と僕。

兵庫県立大学が研究発表されていた淡路島でのイワヒメワラビを活用しての緑化の報告も
読んだが、今回の調査区での観察はまた違った視点での検証も出来るかも知れないと
個人的には関心を持っている。
   
 枕谷の調査区へと進む クマハギ 
地蔵峠からの入林が禁止になって以来、このゲート前(内側)には久々に来た。
班ごとに自己紹介し、調査と作業道具を持って調査区へと下っていく。
もうあたりの緑も5月とは違い濃い色になっている。暑くもなく今日は良い感じ。

途中クマハギの現場もあった。前を歩く、前回ご一緒したTさんと「イワヒメワラビが
スゴイ背丈になっていますね。5月とは全く違う景色」と話す。
   
 イワヒメワラビが繁茂している 放置区のテープ張りは大変だ 
調査区周辺の5月とは全く違うイワヒメワラビの腰高の繁茂状態に驚いた。
調査区の全80サブプロットを4班で分担して調査するのだが、新しい区画づくりでイワ
ヒメワラビを除去しないとならない。マット状に根を張っているので5センチくらい掘っ
てマット状のままごっそりと取り除いていく。これがなかなかの力仕事で汗びっしょり。
マット状に根が張り巡らされている。これじゃブナの赤ちゃんより水分をどんどん横取り
してブナの赤ちゃんに水が行き渡らず乾燥に負けて枯死していくのもわかる気がする。
手も腰もクタクタになった。そして調査区画としてテープを張って1mごとに区画する。 
   
 除去作業はなかなかの力仕事  テープが見えないくらい成長
次に、前回時間切れで区画区のテープを張れなかった柵内の放置区の横部分に、まず
テープを張るのだが、これがまた一苦労。イワヒメワラビのジャングルをかき分けて根元に
調査区を踏まないように、通路まで足を広げたり飛んだりしながら、1m区画で張る。
長谷川研究林長もイワヒメワラビと格闘しながら僕の班の区画を手伝って下さった。
まだイワヒメワラビが大きくならない春のうちに残さず済ませておくべきだったと思う。
   
 新除去区に区画テープ設置作業  高柳先生の講義
パラッと雨が降ったがすぐに止んだ。食事は日陰で30分間。そのあと高柳先生のミニ
講座。高柳先生からも、兵庫県立大学のイワヒメワラビの報告らしきことも話された。
アブが多くてブンブン飛んでくる。もうトンボも飛んでいる。

さて、柵内の調査区の植生調査開始。除去区と放置区のブナの枯死本数を調べる。
これまた予想通り、前回ブナの芽生えが予想以上に多く、色つきの串が足らなくなって
色を塗っていない竹串を刺したのだが、これが草本色と紛れて探せない。串を探すのに
すごく時間を取られた。有るはずの本数を探さないと枯死本数がわからない。
除去区はまだしも放置区のイワヒメワラビジャングルの中でこの串を探すのはキツイ。
新しく出現(芽生えた)したブナには銀色の串を横に刺して本数記録した。
   
 「これはアカシデだね」  「これは??」
次に多様性調査は16サブプロット。各班4サブプロット内に生えている木本名と本数、
草本名と本数を記録し、それぞれ被覆度も調査(%)する。これがまたまた超難題。
木本も草本も芽生えたばかりの小さな葉を見て、これが何の木や草の子供なのか同定出来る
知識がない。木や花に詳しい参加者も中にはいるが、こんな稚樹や芽吹き直後のような姿では
なかなか「これです」と言い切れない。写真を見たり高柳先生や花に詳しいHさんにその都度
伺ったりして同定作業をすすめた。

ノチドメ(セリ科)、トキンソウ(キク科)、ミノフスマ(ナデシコ科)、オオバコ(オオバコ科)、
イタドリ(タデ科)、ヤマモミジ(カエデ科)、コナスビ(サクラソウ科)、ウバユリ(ユリ科)、
メナモミ(キク科)、ドクダミ(ドクダミ科)、ヌマトラノオ(サクラソウ科)、ダンドボロギク(キク科)
スゲ(カヤツリグサ科)、タニウツギ(スイカズラ科)、タンナサワフタギ(ハイノキ科)、
チドメグサ(セリ科)、アカシデ(カバノキ科)ハシカグサ(アカネ科)、ツボスミレ(スミレ科)、
イグサ(イグサ科)、サワオトギリ(オトギリソウ科)、ヌルデ(ウルシ科)、杉(実生/スギ科)
、ヒメヘビイチゴ(バラ科)等々を写真などと比べて同定するも、まだ小さい時期で実に難しい。

時間がとてもかかり、早くも2時半。参加者の多くが知識の未熟さを思い知らされた。
イワヒメワラビの除去区には5月には無かった多くの芽生えが多種多様に生えている。
   
 除去区には多種の植物が 「う〜ん、最後の串が見つからない」 
そして高柳先生のお話しを伺う。この調査もまだ2年3年としていかないとなかなか結果
には結びつかないとのこと。

イワヒメワラビを除去したところが種間競争もなくブナが生き残る率が高いか、はたまた
放置区がイワヒメワラビで影になり乾燥からも守られて生き残る率が高いか等々。そして
シカ害から守られたネット内(シカがいなくなった場合を想定)とシカが自由に捕食する
ネット外(現在のシカの影響を確認)の調査区でのブナの生育の違いも、今後の経過を調
査しないとわからない。今回も除去区の方が枯死数が少なかったところもあれば、放置区
の方が枯死数が多い所もあってまちまちの感じがあった。ブナの稚樹の葉は虫に食われて
ボロボロのものもあれば、イワヒメワラビに守られて?大きく育っていたりこれまた色々。
 
「 さあ、須後に戻りましょう」
高柳先生と地蔵峠でお別れして、我々は研究林事務所前へバス移動。40分はかかる。
林道途中でバスを止めて試験間伐をしたところで吉岡先生の説明を受けた。
見た目は列状間伐に見えるが沢沿いの為そう見えるがそうではないらしい。
光を入れて植生がどうなるかを今後調査されるとのこと。
間伐費用を伺うとその高さに驚いた。またその間伐材は8割がチップ、2割がベニヤに。
「もったいないことです」と長谷川研究林長がおっしゃった。林業の難しさも垣間見える。

事務所前の講義室で、長野さんから森の現状と芦生の森を守るお話しを伺った。
そして班ごとの反省会。そして各班からの報告や反省点や改善点を受けて、村田さんが
今後も調査強力をお願いすると共に、ボランティアのとりまとめというか世話役というか
参加回数の多さから、京都のTさんと僕にお声がかかった。僕になにが出来るのやら・・・。
京都のTさんと悩みつつも、メーリングリストなどできることは協力していくことになった。

次回の調査活動は11月の予定。昨年同様に降雪前のシカ防護ネットを下げる作業もある。
それまでにも今回のメンバーで調査区に来て経過観察調査希望者は申し出ることとなった。

同じ班の奈良のHさんは残って明日も森を散策される。ふぉれすとさんともお別れ。
僕は、夏休みでファミリーキャンパーで賑やかな河鹿荘で汗を流し、さっぱりとして帰路に
ついた。道の温度計は28度、朝は25度だった。雨にもあわず19時前に帰宅出来た。
 本日の調査区(緑色ルート)
 
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