【芦生】芦生の森の防鹿ネット内観察とネット上げ作業

2012年05月16日(水) 芦生研究林 9名での作業と観察


 昨年の降雪前の11月にボランティアの方々や、「芦生地域有害鳥獣対策協議会」で、
南丹市、美山町の役場からと芦生研究林事務所の技術職員の皆さんや、高柳先生(京都
大学大学院農学研究科)とともに「鹿防護ネット下げ作業と植物の観察」をした。

今回は去年下げたネットを上げる作業。4月頃にするのかと思っていたが連絡が来たのは
5月の第2週。しかも作業日は翌週という急な連絡。たまたま休みが取れる日で良かった
が、多くのボランティアの方々は都合がつかないのではないかと予想。
今回は午前中からではなく午後の1時からとか。作業量も観察もそれほど出来ないだろう。
   
 かやぶきの里/美山  畑の中はレンゲが咲き誇っている
2時間で芦生に着くが、余裕を見て3時間前に家を出て美山の「茅葺きの里」でのんびりした。
晴天の茅葺きの里の前は、白い蕎麦の花の時期ではなく今はレンゲが畑一杯に咲いている。

12時20分に芦生研究林の事務所前に到着。登山靴を履きスパッツをつけて準備したものの
昨日の雨で徒渉部分の水量やぬかるみを考えると・・・・・長靴に履き替えておいた。
気温は18度だが、日影に入ると空気が冷たくて肌寒い。さわやかな日だ。

案内の手紙やメールを下さった南丹町、芦生地域有害鳥獣対策協議会のMさんとご挨拶。
その他、Nさん、Kさん。
やはり急な連絡だったので来られるボランティアは昨年森林インストラクターにも合格された
京都のTさんと僕のみ。今回も高柳先生とともに芦生研究林の技術職員のSさん、Hさん、
Aさん達も全面的にバックアップ。合計9名は全員長靴姿。自己紹介と今日の作業計画を聞く。

昨年ネットを下げた内の一部のネット内のイワヒメワラビを抜いた半分部分と、そうではない
部分で、昨年豊作だったブナの実生がどれほどあるかを数えて、ネットを上げた後、
夏や秋にブナの残数や成長の変化を観察するとのこと。 
   
 芦生の森も花の季節  ツルハシ、木杭、メジャー等々
ツルハシや木杭、ヘルメット、竹串、テープ、巻き尺などの作業道具とともに、3台の車に分乗し
長治谷へと向かう。昨年の11月に部分工事していた林道のコンクリート法面は完成していた。

途中、許可ガイドと共に弁当タイムの団体がいた。美山町の許可ガイドと入林しているよ
うで平日も団体が多いという。今日のガイドは先日のBSテレビにも出ていたガイドさん。
モンベルのフェアの会場でも美山町・芦生のブースでよくお会いする。
   
 高柳教授を先頭に出発  ブナの芽生え
 長治谷ではまた別の団体がいた。僕らは1人1人ツルハシなどの道具を分担持ちし移動。
中山神社に手を合わせ進む。昨日の雨でぬかるみが広いが長靴で難なく進める。
徒渉もジャバジャバと飛び石せずに楽に渡れる。

昨年作業したネット横にはブナの木があるので、昨年豊作の沢山の実が落ちたらしく
すごい数のブナが芽吹いていた。
   
 20区画×2の寸法図面  杭を打ち区画を作る
そこに観察区域をまず整備する図面を渡され、角に木杭を打ち、メジャーで50cmの
通路と1m四方の観察域をプラ杭を打ち、ロープで囲んで作る。芦生のあちらこちらで
こういう観察区域があることを15年以上も見てきたが、実際に竹串を刺していく作業と
その本数を数えるお手伝いするのは初めて。 
   
 防鹿ネットをしっかりセット  1m×1mの区画内で数える
イワヒメワラビを抜いた半分部分に1m区画を20箇所、抜いていない部分にも20箇所。
それぞれブナの芽が出ている横に赤い竹串を刺す。簡単のようだが、他の芽吹きもあるの
で最初は「サッ」と見分けられず時間がかかった。こちらが5つ程見つける間に、技術職員
さんの手を見ていると田植えのごとくササッと竹串を10本以上も手早く刺していく。
流石に見分けが実に素早い。まだ開ききっていない芽も「これブナの芽ですよ」と見分け、
他の草に隠れているブナの芽も「ここにも隠れている」と見逃さない。「流石ですね!」。 
   
見落としは無いか? ブナの芽生えの横に竹串を刺す
 「おっ、アカショウビンが鳴いている」と技術職員さん。長い時間鳴いていた。
ウグイスも鳴いている。そのあとで「ホウ、ホウ」と大きな鳴き声も。
鳥だろうが種類が解らない。
「まるでオラウータンでもないているような感じの声」と技術職員さんが笑う。
   
 手前はイワヒメワラビが無い区画  ツルハシでイワヒメワラビを削ぐ
今日は時間が少ないので、2箇所のネット上げとその中の区画作りと芽吹き数の記録に
終わった。この数百本もあるブナの芽吹きも夏の水不足などで1本残れば良い方だという。
また、イワヒメワラビを抜いた方がこの区画のブナの芽吹きを守れるのか、イワヒメワラビも
そのままにしていた方が鹿害や他の草に隠れて乾燥とかからも守られるのか、何年もかかる
調査研究となる。保存や鹿害から守るにも「なにが正解か」を検証し効果ある方法を見つける
地道な作業(研究)だ。「僕らが生きている内にわかるかなあ」
   
 ブナの新緑が美しい  さて本日の作業は終了
長治谷に戻る際に、コシアブラの木が根元から折れて倒れていた。痛々しい姿だ・・。
もう夏にはこの木自体は枯れるらしいが、最後の力を振り絞って枝先に芽を出している。
「この木はもう枯れるので特別に採取を許可しましょう。食べ頃なので採って良いですよ」
と言われ芽を摘んだ。技術職員さんからも「良いお土産になって良かったですね」と言わ
れた。今夜、天ぷらにして生命を頂くことに感謝しつつ食したい。
新緑の芦生の森。上を見つつ歩く。青空と淡い緑が実に美しい。「やはり気持ち良い森だ」
 
 長治谷前の防鹿ネットとススキ
長治谷の小屋前のネット内の説明を再度受けた。ススキの原があったときと、鹿によって
無くなった時の渡り鳥たちの変化のことを教わった。
そしてネット内に段々とススキが増え始め、鳥たちの休み場ができ、猛禽類にも守られる
隠れ場が出来て昆虫や鳥の数の変化も、高柳先生の解説で学ぶことが出来た。

車で須後の事務所前まで戻り、予定時刻より早めの解散となった。
森林軌道の橋の方からまた団体が来た。平日なのに3団体と会ったことになる。

次回は暑い夏にも作業がありそうだ。また日程が合えば訪れて作業をお手伝いしたい。

高柳教授はじめ技術職員の皆さん、そしてMさんや京都からのTさんにもご挨拶し帰路に
ついた。

芦生の森に行くといつも不思議と体が軽くなる。
空気や湿度が僕の体に合っているのだろうか。

大好きな森での作業で気分も軽くなり、芦生から美山町を抜けて2時間で帰宅した。 

  ★芦生の森での「登山記録」リスト
   
  ★芦生の森での「沢登り記録」リスト
 本日の作業ルート
 
   この1つ前の記録は「【兵庫】丹波市・ヒカゲツツジの清水山から向山」です