【芦生】芦生の森・調査研究地準備作業 2019
  2019年7月17日(水)~18日(木)


今日から3日間は、京都大学のF君のこれから始まる研究の調査研究地作成のお手伝い。
今日は長男の誕生日だが、15日に家族での誕生日食事会と不在者投票を済ませておいた。

5月中旬にバルト三国とロシアに行き、6月下旬から7月初旬は北海道に車中泊の旅に相棒と
行き、暑さから1日でも遠ざかろうと逃げてきたが、じわじわと暑さと湿度が本格的になってきた。
蒸し暑い時期の力仕事、どこまで自分が持つかがちょっと心配なのだが・・・・。

F君は「知ろう守ろう芦生の森」の植生調査活動にも、研究林長とともに来てくれたことがある
ので顔も知っている。

「知ろう守ろう芦生の森」の活動は9年目に入り、いろいろなデータの蓄積もされてきた。
芦生の森では、猟師さんのご協力での狩猟や積雪期に死んだりして鹿の個体数も減っているにも
かかわらず、不嗜好植物ばかりが増え、期待し予想したようにはなかなか下層植生が回復しない。

F君の研究は、「何が回復力低下要因なのか」を解明し、そして「下層植生を回復させたい」という
大きな最終目標もあるというので、是非協力したいと思った。

朝4時に洪水警報が出るほど土砂降りになったが、6時には小雨になった。
2泊3日の衣類や飲み物の用意と、車中泊の用意は昨夜済ませておいた。

6時半
に家を出た。台風も急に発生し、これから数日間の天気が気がかりな期間となる。
   
   
美山かやぶきの里はまだ静かな時間。
去年の台風の影響で、駐車場のトイレも使用制限。地区全体で節水が続いているらしい。
河鹿荘の夕食は再開しているが、風呂もキャンプ場も来年の春まで営業できないらしい。

8:30
芦生研究林に到着。初日の集合は10時なので近くを散策。雨が降ったりやんだり・・・。

前夜から宿泊していたF君が宿泊棟から出てきた。「おはようございます」と久々の再開だ。
しばらくして今日のみボランティア参加する奈良のHさんも到着した。「お久しぶり~」

10時に研究林長や技術主任のSさんやKさん、F君と同じ研究室のS君ともご挨拶。
技術職員さんたちは他用が山積していて今日は1人もH君の作業地には来られないらしい。

「えっ、研究林長と学生2名とボランティア2名の5名で、イワヒメワラビを剥ぎ取るの(@_@)」と
驚きの僕。「知ろう守ろう芦生の森」の調査地のイワヒメワラビを剥ぎ取り作業をした9年前は
10名以上でしても汗だくになった作業で、しかも今度のF君の研究地はそれよりも総面積は
広くて調査地数も多いという。しかも、そのときの剥ぎ取り作業の経験者は僕一人のようだ。

「雨の具合がどの程度か、また土壌の硬さがどの程度かわからないので、できるところまで
頑張るしかないよね。F君の剥ぎ取り計画のようには、今日の人数では進まない気がするよ」
と僕。Kさんの案内で剥ぎ取り作業の道具類を集めに行き、研究林長の車に積み込んだ。
     
10:05
研究林長のI先生が運転して下さるデリカに乗車して出発。
車内でF君から「今回の作業と研究目的」のレジュメを頂き、説明を受けた。

長治谷小屋前の調査地で、I先生から既存の柵内の植生変化の説明を受けた。
既存のシカ柵内ではサワフタギが優占していて、事前の調査では95種が出現しのこと。
サワフタギを食草とするシロシタホタルガがいた。
ホソバヨツバムグラ、ハナタデ、アカバナ等も出現している。

今年の5月の新規シカ柵内の調査時は56種を確認し、優占種はイグサ、ヒカゲノカズラ、
ミツバツチグリなどであったらしい。
車から作業道具類を降ろして、お菓子や冷えたペットボトルの飲み物も先生やF君から頂き
野田畑の作業予定地のうち、まずはDエリアへと進む。昨年の予備調査では65種を確認
したらしい。既存の柵内では、イグサ、イワヒメワラビ、ヤノネグサが優占しており、5月の
調査時には調査地D1で29種、調査地D2で21種を確認したとのこと。

「うわ~、思ったより広いねぇ~。イワヒメワラビだけじゃなくイグサが沢山あるのでこれが
剥ぎ取り作業を阻むかもなぁ。」と僕。「ここは2m50cm×16m位を剥ぎ取ります。」とF君。
まずは剥ぎ取るエリアに貴重な植物がないかを確認し、あれば移植するという。

やり始めるとやはり成長したイグサの部分は掘る深さも深くてイワヒメワラビのように平鍬や
丁能鍬(ばちぐわ)で絨毯をに巻くようには剥ぎ取れない。

「この5mほどはあとにして、先にイワヒメワラビの部分を剥ぎ取っていこう」ということになり
シャベル(東日本では大型のものを「スコップ」、片手で扱える小型のものを「シャベル」と
呼ぶ人が多いのだが、ここ西日本では大きなものが「シャベル」で、小さな方が「スコップ」と
呼ばれている。JIS規格では足をかける部分があるものを「ショベル(シャベル)」、ないものを
「スコップ」としており、厳密には大きさで区別しているわけではないらしい)
で剥ぎ取りラインを
まず刺し掘りしてから、平鍬と丁能鍬などで剥ぎつつ巻く。

防鹿ネットがすでに張り巡らされているので、剥ぎ取ったものを実験地外に運び出せない。
「防鹿ネットも外して開口部を作ろう」と二手に分かれて作業開始。
   
   
   
だんだんと5名の息も合ってきてじわじわと作業も進んだ。教え子のために奮闘されている
研究林長を見ていると、僕もHさんも暑いとばかり言っておられない。頑張らないと!

平鍬は巻き取りに便利で、丁能鍬(ばちぐわ)はイグサの掘り込みや平鍬では引っ張れない
力の要る時に使いやすい。巻き取ったのをテミに入るくらいにシャベルで切り取って運び出す。

蒸し暑い時期の力仕事。適度に休憩しつつ剥ぎ取り作業を繰り返す。
重い土付きイワヒメワラビをテミに山積みして運び出す研究林長のパワーも凄いし、若い学生
2人のパワーも流石だ。

13:00
研究林長は昼からの用事があるので須後へ戻られる。僕らは食事にした。

「ここからは4名。あのイグサの部分もまだ残っているし頑張ろう」と僕。
「明日の絵画教室では、腕がパンパンで動かないかも~」とHさん。
「手が震えて新しいタッチの絵が描けるかも。口で筆をくわえる手法もいいかも」と冗談をいう僕。

黒い雲が出始めた。なんとしてもこの実験地だけでも済ませたい。
長治谷への迎えの車は16時にくる。20分前にはここを出発しないとならない。

イグサの部分をやっと終わりかけたら、雨がポツポツ降り出した。「急ごう」と最後まで剥いで
防鹿ネットを上げていると土砂降りになり、雨具を着て木の下でしばし待機。

「今日はあと1カ所する予定。無理かなぁ・・・。剥ぎ取り作業がこんなに大変とは・・・」とF君。
剥ぎ取った所はこの雨でヌタバかナワシロのように水がたまり、ドロドロになっている。

「時間も無いし、今日の継続は無理」と判断し、15時過ぎに道具を木の下に集めておき、
迎えの車が来る長治谷へと向かう。剥ぎ取った隣の、刈り取る部分も未着手となった。

15:45
FさんとKさんが迎えに来て下さっていた。林道も土砂降りだったらしい。今は小雨になっている。
長治谷のネットの点検は明日一番にすることにして須後へと戻った。
 
須後に戻り帰宅するHさんとお別れ。僕は明日に備えて研究林長のお言葉に甘えて、
宿泊棟で汗を流させてもらった。T先生の区画法による鹿の頭数調査の時には宿泊させて
頂いたところである。F君とS君はこの宿泊棟で今日も泊まる。
 (河鹿荘は節水で来春までお風呂が休業中。日吉温泉は水曜日が休業日のため)

汗を流した後、大急ぎで明日の朝と昼の弁当を買いに知見の「勝山商店」に向かったが
すでに売り切れてパンが少しのみ。さらに走って「ヤマザキショップやまよ」でも弁当は
先ほど売り切れたと・・。おにぎりとパンを買った。これで明日は大丈夫。

夕食は河鹿荘でいつもの鹿肉料理「かえで御前」を頂き、トイレが使える芦生ロードパーク
で車中泊した。明日に備えて、パンパンになった腕をバンテリンでメンテナンスしておいた。
 
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7月18日(木) 2日目作業

夜中も雨が降ったりやんだりだったが、朝4時には雨も上がった。
周辺を歩いたり朝食を食べたりしていると、6時半に土砂降りになった。
今日の集合時間は朝9時だ。

8時に研究林の宿泊棟横の駐車スペースに行き、宿泊棟の冷蔵庫に入れてもらっていた
お茶を大小2本の水筒に移し入れた。暑がりの僕は冷えた水分が欠かせない。

9:00
「おはようございます」
今日のボランティアは僕と森林インストラクター京都会のMさん。Mさんはイワヒメワラビの
剥ぎ取り作業は初めてらしい。「めちゃくちゃ腕が疲れますけど、頑張りましょう」と予告。
「私は昨日半日だけの作業だったけど、腕が疲れて子どもにマッサージしてもらいました」
と研究林長のI先生。「僕はしっかり寝ました」とF君。

今日もF君から飲み物、先生からお菓子を頂き、I先生の車に、F君とS君、そしてMさんと
僕の5人が乗り込んで出発。車内ではF君がMさんに研究の目的と作業の説明。

まずは昨日の午後の帰りにできなかった長治谷の調査地F地点のネット周辺の見回りと
ネット上部が支柱から外れている所を、しっかりとかけ直した。
   
長治谷から野田畑の調査地へと向かう。昨日と今朝の雨で野田畑までの道のぬかるみが
増していたのと同時に、野田畑手前の川が増水していて、昨日の徒渉地点からは渡れない。
やや下流まで見に行ったがそこも無理。少し右岸斜面の道を進んだ所の昔は小さな木橋が
あった所まで行き、そこから中州へと徒渉し対岸へと上がった。

「野田畑の調査地は、増水時に道具を運んだりする場合は困るときがあるね」と僕。
   
   
   
   
昨日作業をしたDエリアを見つつ、今日はEエリアに行く。
Eエリアの既存の柵内ではアシウアザミが優占しているエリア。その既存の柵内のアシウアザミも
シカが入って見事に食われて多数の茎だけが棒立ちしている。
新設ネットの5月の調査時には調査地E1で40種、調査地E2で31種を確認したらしい。 

今日は昨日より気温も低くて動きやすい。指が長いカエルがいた。「カジカガエルのオスかな?」

まずはネットを下げる作業から開始。
土壌も昨日の粘土質から、枕谷の剥ぎ取り時のようにすぐに小石がある層で、イワヒメワラビを
絨毯状にグルグルとめくりやすい。めくってみると、思ったよりやや傾斜になっている。

「昨日より順調ですよね」とF君。「断然昨日よりは楽だな」と僕。「なかなか重労働ですね」とMさん。
   
   
   
   
食事休憩をして、今回剥ぎ取らない部分にある植物の説明をI先生がして下さった。
オニユリのムカゴの話し、ベニバナボロギクの葉の切れ込みに関するお話しなど、
とても興味深かった。

今年5月に買った林将之著の「葉っぱはなぜこんな形なのか?」にも「葉に切れ込みが
あると、葉の周囲の空気が流れやすくなり、光合成に必要な二酸化炭素を取り込みや
すくなる」という研究結果があったことが記載されていたと記憶する。
沢山ムカゴをつけたオニユリの株が複数あったので、まだまだ増える可能性もある。
オニユリの根はあの「ユリ根」。茶碗蒸しに入れても美味しい高級食材。

「やった~!E2の剥ぎ取り完了!」と万歳。こちらのイグサはまだそれほど大きく成長
していないので、あっても根が浅くて簡単に剥ぎ取れたのが昨日との大きな違いだ。

黒い雲が近づきつつある。
どこまでできるか・・・すぐ横のE2の剥ぎ取りも着手。ここは剥ぎ取った物を捨てる場所
まで対照区を越えて運ぶ必要がある。若いF君とS君が奮闘してくれた。
   
14時を過ぎるとぽつりぽつりと雨が降り出した。2本目の支柱の所まで剥ぎ取るや
いなや雨脚が急にきつくなり、雨具を着るべく、ザックまで急いだ。

14:30
「雨もきついし、今日はここまでにしましょう。急いでネットを上げて戻る準備を。」とI先生。

長治谷の駐車地へと急ぎ、須後へと戻る。
途中のブナの木が並ぶ所で、I先生からこのブナの葉を切って、並んでいるブナへの危険
を知らせるコミュニケーションを調べている学生さんの興味深い話を聞いたり、枯れ葉を
100gとか200gとかを複数埋めた所で、気温や気候や土壌などの違いでの分解速度などを
全世界的に連携して研究していることなどのお話しが聞けたのはありがたかった。

15:30
須後に到着。
昨日同様に戻ると小雨・・・。 「Mさん、お疲れ様でした」とMさんと分かれた後、明日の
作業の検討。台風の影響で大雨も、という予報。

あすは遠方からの初めてのボランティアも来る予定とのこと。
初の芦生で大雨+作業では申し訳ないということになり、早く知らせる必要もあるので
明日は先生と学生と職員さんで作業をするかどうかを、朝の天気を見つつ決めることに
なった。「ボランティアは明日はナシ」という事になり、「27日も作業するなら来ますよ」と
I先生とF君に伝えて、僕も帰路についた。

相棒から「映画を見に行って来るね」というメール。
「今日も帰らないと思っているからなぁ。夕食を済ませて帰らないと・・・。」
途中、開店時間の17時になったので園部の台湾料理の金麒麟で早めの定食を食べて
から帰ることにした。金麒麟、クーラーが効きすぎていて寒い寒い・・・。

暑がりの僕には、カンカン照りの中での作業でなくて助かったとも言える2日間であった。
 
(※7月27日(土)も継続作業の予定だったが、27日も次の台風6号の影響で中止となった)

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芦生研究林から帰って2日後の7月21日は第三日曜日なので

川西里山クラブ】の能勢妙見山の整備活動日
   
   
7月21日(日)
8:20

蒸し暑い日曜日。芦生の作業疲れももうないので、クロスカブ110に乗って行くことにした。
バイクで走ると風を感じて気持ちよい。早く着きすぎたが、Mさんも到着された。「早いね」

9時20分の始発ケーブルで登る。今日は薪割り班と、大径木になりナラガレになったコナラを
伐採したあと、クヌギを2016年に植樹した地の笹刈り班に分かれて作業することになった。

薪割りには人数がいる。僕は笹苅りにSさんと二人で刈り込み鋏を持って向かうことにした。
防鹿ネットで囲ってあるので、鹿に採食されることなく笹もどんどんと伸び放題。

クヌギの苗木と笹の背丈が拮抗していたり、クヌギの苗木が笹やイバラに覆われてしまって
いるところもあり、植えたクヌギ苗の周囲の笹を順次刈っていいき、日当たりを良くした。
すでに枯死してしまっている苗木も複数本あったが、うまく成長してほしいものだ。

立っているだけでも滑り落ちないように力が要る斜面での作業。イバラが多くて痛い痛い!
しかも顔の周りにクマバチやスズメバチが何度も威嚇しに来るので、しゃがんだりと忙しい。
アメリカではインクベリーと呼ばれているヨウシュヤマゴボウもとても太く成長し複数本ある。

午後からは、防鹿ネットの下部が浮いている部分をペグ杭で補修しにいき、薪割り処理の
加勢をした。古くて腐った大きな切り株を破棄すべく一輪車で運ぶのは実に重たかった。

暑い!持参した冷たいお茶は全て飲み干し、14時20分のケーブルでNさんと下山。15時帰宅。
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