【芦生】降雪前の芦生研究林の沢中倒木調査


【行き先】 芦生研究林/櫃倉谷・ナメ谷・中ノツボ谷・内杉谷
【日 時】 2014年11月23日(日)
【メンバー】F氏・MICKEY・矢問 
【コース】 須後-落合橋・入渓-中ノツボ谷出合-櫃倉谷-ナメ谷
      -中ノツボ谷左俣-内杉谷-幽仙橋-堰堤・林道-須後
 鹿の食糧にもなる沢中や谷筋の倒木類の調査を降雪前に続けられているFさん。
今日はFさんの調査入林申請のもと、僕らも同行申請して頂き、櫃倉谷や内杉谷の調査
に同行させて頂けることになった。

7時半に須後に集合なので、家を朝4時45分に出て、吉野家で朝食をとり、コンビニで
昼食のラーメンやパンなどを買う。
   
まっ暗の上に、亀岡から美山近くまで濃霧だった。昨日よりずっと曇り気味の天気だ。
薄暗いかやぶきの里ではまだ民家に明かりがともっていた。気温3℃。
芦生ロードパークの下斜面は台風18号の被害でえぐれ、工事中の重機が入っていた。

7:10
須後に到着。準備しているとFさんも到着。「おはようございます」
昨日は北摂の山を暗くなるまで11時間も歩いていたとのこと。お元気だ!
   
   
   
7:20
林道内杉線を歩きながら冬芽の観察や草本類の説明をFさんがして下さる。
斜面の色々なシダや苔が目に入ると、1つ1つの名前や違いをポンポンと説明。
ハリガネワラビ、シジガシラ・・・等々。
シダの胞子嚢をルーペで観察。そのいろいろな形の多様さにMICKEYは驚いていた。

林道斜面が、間伐によって明るくなっている。今後は光が入り、どのような草本類が生え
た林床になっていくのだろうか。
   
   
   
研究林外のマムシグサの実の上の方がかじられている。下の熟れた実を口にしてみた。
「あれ?以前のようにピリピリと来ませんね。甘いですよ」と僕。
「う~ん、甘いな・・・なぜかな」と頭をかしげるFさん。個体によって違うのか、時期に
よって違うのか。色々な仮説を話しながら歩く。

後ろから許可車輌であるらしいバスが抜いていった。8~10人乗っていたように見えた。
   
   
   
8:10
落合橋。「ここから櫃倉谷に入渓して歩いたことは無いでしょう」とFさん。
水量の少なくなったこの時期に沢筋を歩いて、まだ生きている倒木を調べる。
これらが積雪期の鹿の食糧となるらしい。少しでも葉を残しているとそれだけで樹種が特
定できるが、全く落葉してしまうと、樹皮や冬芽などで識別する以外にない。毎週、調査
入林されているFさんによると、先週よりは落葉が進んでいるらしいが、まだ落ち葉も
母樹近くの下に残っているため、調査可能とのこと。

「甘い香りがするね」とMICKEY。「タカノツメの葉が沢山落ちているしね。カツラと同じく
落ち葉が水分を含んで発酵するとマルトールと言う匂い成分を出すからね」と僕。

沢筋を左岸右岸と渡渉しながら調査するのだが、長靴は滑りやすいため慎重に進む。
MICKEYも最初はコツがつかめなかったようだが、進むにつれ段々と慣れてきたようだ。

なんて水が綺麗なの!魚影もよく見えるわ。去年の夏の溯行時もこれくらい水が澄んで
いてくれたら良かったのになぁ~」とMICKEY
   
   
   
アワブキの裸芽やオオバアサガラ、ツルアジサイなどの冬芽や葉をルーペで観察した。
橋の下には鹿が大好きなアオキがあった。鹿が採れない位置にあるため健在だ。
谷の中で色づく木はチドリノキが圧倒的に多いというFさん。黄色っぽいほとんどの木は
チドリノキだった。

「これはオオバタネツケバナ。」葉を口にしてみる。わさび味がしてウマイ。
「クレソンよりも数倍美味いと思う」とF氏。MICKEYも「同感です。美味しい」と。
「花の無い時期にこんな地面にある葉を見てよくわかりますね」と感心してばかりの僕。
   
   
   
   
「おや?あれはSさんでは?」右岸を歩く男性二人。声をかけるとSさんとその知人の方。
「Sさ~ん」とFさんが何度か呼んでSさんも気がつかれたようだ。
申請を出していて、やっと天気も持ちそうなので今日来たらしい。
いつも六甲山を歩いているお友達と、櫃倉谷をずっと先まで歩いて適当に戻るとのこと。

トチノキの枝股にシダが見える。「あれはオシャクジデンダですよ。」とFさん。
オシャクジデンダは、林中の日陰地の樹幹や岩上に生えるシダで、夏には葉がなくて、
湿った場所を好む冬緑性の着生多年草植物。初秋に葉を生ずる。
     
     
     
シシウドやエゴノキ、テツカエデ、ハクウンボクの冬芽を観察。
頂芽を見たり、芽鱗を見たり、副芽を見たり、葉痕を見たりと、あれこれ楽しい。
また、単軸分枝の樹木や、仮軸分枝の樹木の説明をFさんから伺う。
   
   
   
   
種を飛ばす前のウバユリがあったので、Fさんが振ると翼のついた種子が沢山飛びだした。
翼は昆虫の内羽のように薄くて三角で真ん中に種子がある。

進行方向から男女二人がやってきた。林道で抜いていったバスで来た人らしい。
この森に魅せられて5年間通っているとのこと。「お気をつけて」と分かれた。
鹿の警戒音が何度か聞こえた。
   
   
   
   
11:30
ナメ谷出合。許可バスで来た人達であろう4名が休憩している。
僕たちは右手のナメ谷に入り、しばらくしてからランチタイムにすることにした。
ナメ谷と言うだけあって黒い岩肌のナメがずっと続く。
「まるでウォータースライダー」と言うMICKEY。滑らないように慎重に登って行く。
ストックの先もツルンと滑るので力が入れられない。
ジョウビタキの地鳴きが聞こえる。
   
   
   
   
風が通らないところでランチにした。今日はいつも持参している「THERMOS (山専ボト
ル)」ではなく、同等の保温力と山の雑誌で紹介されていたとても軽いTIGERの「夢重力」
のサハラマグ0.50L MMZ-A050を試す。
朝4時に入れ7時間経過したお湯をカップヌードルに入れて試した。全く問題ない保温力
だった!。食後のコーヒーにも問題なし。今日はストーブでのお湯沸かし直しが不要だ。
「本当に本体が軽くて良いね」とMICKEY。この冬は二人の間で活躍しそうだ。

木から枯れ葉が風に舞ってヒラヒラと落ちてくる。「風情があって良い感じですね~」
   
   
   
   
ナメ谷を詰めていき、倒木が増えてシダの多い両斜面が細く狭まってきた。
コシアブラの木に鹿の角で傷が何本かついており、樹脂が出て固まっていた。

12:45
林道に出た。しばらく林道を歩いて、右手の斜面に取り付き登る。鹿の足跡はありがたい。
そして斜面を下ると、中ノツボの左俣だ。11年前の10月にBAKUさん、ゲキさん、もりきみさん
と歩いた
ことを思い出す。穏やかな流れの中を11年前と逆に下っている。

15分ほど歩くと二股。その先へ少し下ると11年前に溯行した時の最後の20m斜瀑だ。
あの当時はそれほど草本類にも明るくなくて興味も無かったが、今は周囲の草本類の葉を
見ると興味がわく。
   
   
   
   
またシダの観察。シノブカグマ、イワヒメワラビ、コバノイシカグマ、オニヒカゲワラビ。
「さて、これはなんというシダでしょうか」と、FさんがMICKEYに時々クイズを出す。
今日の復習問題である。僕よりもMICKEYの方がシダの名前をよく覚えていた。

13:10
滝の落ち口。下をのぞき込む。今日はここを降渓するのではない。
ここから南東に進んでから、内杉谷への斜面上部を東へ約700m進み、内杉谷へと斜面を
南下するらしい。急な斜面をここぞとばかり下って行くFさん。ジグザグに鹿の気持ち
になったように僕らは下って行く。下りの苦手なMICKEYがやや遅れ気味だが、「沢登り
でもこんな所は慣れているので大丈夫よ」と言いいつつ慎重に下ってくる。 
   
   
   
   
14:25
内杉谷に下りた。ここからもいろんな草本類や木本類を観察しつつ沢の中を下って行く。
すごく太い倒木が左岸にあった。キノコ、そしてミズナラやカエデの稚樹も所々にある。
ナツツバキの樹皮が鹿にやられている。

左岸の2~30mほど上部に昔の歩道が見えるが、途中で何度も消えているのがわかる。
   
   
   
   
大きなカツラの木がある。さらに進むとHさんが絵のモチーフにしたという滝と岩場。
幽仙橋のところで林道に出るのかと思いきや、まだずっと沢中を進むようだ。
だんだんと浅い平流になりジャバジャバと水の中を歩いて行ける。堰堤が見えた。

15:40
堰堤の右横を登って林道に出た。しばらく歩くと今朝入渓した落合橋。
ここからは林道歩きで須後に戻る。後ろからT先生の車が来た。去年、鹿の頭数調査の
連絡でお世話になったI君も乗っていた。FさんとT先生が歓談。僕はI君と久々に挨拶。
「来週の鹿の個体数調査でまた会いましょう」とI君に言って、T先生の車と別れた。
   
朝かじった研究林外のマムシグサの実の上部がごっそりと無くなっていた。
動物にかじられたのか人に採られたのか。隣のマムシグサの実を口にしてみた。

「うわっ、来た!」Fさんと僕は口の中もくちびるもピリピリ来た。
「なんでも口に入れるんだから・・・」と、冷ややかな目で僕らを見るMICKEY。
「こっちの実は朝のものとは違い、去年と同じくピリピリ口内やくちびるに来ますね」
   
16:20
須後。駐車場横に「ご自由にお取り下さい」とカリンの実が7箇ほど篭に入れてあった。
2つ頂いた。駐車場で協力金を入れて片付けていると、Sさん達も到着した。しばし歓談。

「では、お先に失礼します。」と僕達は河鹿荘へ。連休でキャンプ場も満員の様子。
「お風呂が混んでそうだな・・・」やはり混んでいたが、まず汗を流してサッパリした。
そのあと、レストランでMICKEYの好きな「かえで御膳」と「鹿カツ」を頂き満腹になった。
帰路の気温は7℃。朝より4℃高い。

途中のファミマでコーヒー休憩し、次男の食事を途中で買ってから20時に自宅到着

降雪期にも鹿の調査をされているFさん。その降雪前にもこのような鹿の食糧になりそうな
沢の中の倒木調査に同行させて頂いた上に、沢山の事をご教授頂き感謝の1日だった。

「足手まといになってFさんに申し訳なかったわ」といいつつも、MICKEYは「最後の下りで
嫌いなクサギがあったのを除いて、良い勉強が出来て楽しかった!」と充実感があった様子。

ほんの少しだけ霧雨が降ったときもあったが、暑くも無く寒くも無く良い一日だった。
Fさんは明日、三国岳あたりの冬芽の観察に行かれるらしい。なんとお元気なこと!

来週の土日は、去年も参加した京大の「鹿の個体数調査」に協力すべく、また芦生研究林
を訪れる。これが終わって「鹿の食害防護柵」を下ろすと芦生研究林も雪深い季節となる。

今日の歩数計は23,022歩、18.1km、3,547kcal、燃焼脂肪78.3gと表示。
   この1つ前は「【播磨】秋色の空山」の記録です