【奥美濃】残雪期の願教寺山(1690.9m)


【山 域】奥美濃・残雪期の願教寺山(1690.9m)
【日 付】2007年4月14日(土)
【コース】大杉ふれあい広場−笠羽谷出合の橋−願教寺山(1690.9m)
【メンバー】山日和、柳川洞吹、SHIGEKI、Tsutomu、矢問
奥美濃の第一級ヤブ山である願教寺山を残雪期に「ピッケル、ワカン、アイゼン必携」で
登るというプラン。雪の頃の願教寺山は、山日和さんは6度目、洞吹さんは5度目という。
天気予報がスッキリしないが、ピンポイント予報は昼から晴れるというので決行となった。

大阪組は22時に集合し出発。東海北陸道・白鳥ICからR156−県道314を走る。
この県道は、2005年4月にMICKEYと大日ケ岳に登った際に通って以来久々に通る。
白山中居神社からは自己責任で、落石を除けながら林道を進む。除雪が進んでいるのと
いないのとでは明日朝の出発時間が大きく変わる。林道を白いウサギが走っている。

午前1時半頃に大杉登山口・大杉ふれあい広場に着いた。すでに滋賀からSHIGEKIさん、
大垣からTsutomuさんが到着していて、チビチビとやっていた。

まだ雨は降っていない。午前3時頃前線通過で雨となり、朝6時頃には雨が止み昼から
晴れるという予報を信じて軽く宴会。山スキー好きのSHIGEKIさんとTsutomuさんは朝の
天気と雪の量で山スキーを担いでいくかどうかを決定するという。
空を見上げると沢山の星が出ている。「明日はきっと晴れるさ」と宴会も終了。
朝6時起床として、みんなは車中泊、僕だけは東屋にテントを張り就寝。

4時過ぎに雨が降りだしきつくなる。5時過ぎテントを片付けていると青空が一瞬出たが
また曇ったままとなる。東屋横の石徹白川の水量は多い。6時にまた小雨が降り出した。
6時を過ぎて、みんなはゆっくり起き出したようだ。
白山への大杉登山口 石徹白(いとしろ)の大杉
朝食も済ませた僕は、石徹白(いとしろ)の大杉を見に1人で登山口から石段を登る。
途中で石段も積雪の中。キックステップで滑らないように登り、樹齢約1800年の杉を
見上げた。幹回りが13mもある。が、樹高は25m。もっと背の高い杉を想像していたが
なんらかの理由で折れたのか、現在、幹の半分は枯れてしまっているが、残りの半分は
健在でどっしりしている。縄文杉が発見されるまでは、日本有数のスギの大木だった。

東屋に戻ったら、まだ食事中であったり、出発準備をしはじめていたりと、空を見ながらの
ゆっくりモード。SHIGEKIさんとTsutomuさんは山スキーを今日はやめて登山に徹すると
決定したようだ。周囲の道ばたや土手には、フキノトウが沢山出ている。
尾張小牧ナンバーの釣りの2人組が来たので挨拶。
残雪・落石・ヤブの林道 石徹白川の水量は多い この下が地形図の「大滝」
7:55
天候の回復を信じて東屋を出発。ここから先は「林道」と言っても使われておらず、残雪
・落石・土砂・ヤブと荒れ放題。「雪解け水と雨とのダブルで川の水量が凄いですね」と
僕が言うと「徒渉地点は大丈夫かな・・・」と洞吹さん。「えっ、徒渉があるのですか」
と、この山を未経験の3人は予期していない返事に同時に驚く。「うん、3回ほど徒渉し
ないとねぇ・・・」3人は渦巻く川の水量にまた目をやりながら「3回の徒渉か・・」と進む。
笠羽谷出合の橋を渡る 橋を渡って左手が徒渉点 みんな苦労して徒渉
8:30
橋が見えた。笠羽谷出合の橋だ。橋を渡ったところの沢を徒渉するらしい。
「僕が1人で来てこの水量を見たら徒渉をあきらめてきっと帰りますよ」とTsutomuさん。
山日和さんが岩と水を見つめてトップで進んだ。滑りやすい岩の飛び移りで山日和さんの
足は一瞬膝まで浸かる。次の洞吹さんは岩と岩の飛び移りに成功。残る3人は躊躇。
僕が行く。途中でスパッツの靴底ベルトが切れた。岩の飛び移りで滑って僕は右足が
膝まで浸かった。「ああっ!」スパッツの靴底ベルトが切れたせいで、水が一瞬で靴に
進入してしまった。渡りきったときには右だけ靴の中は沢靴状態だ・・・。
凍傷にはならないだろうがグチュグチュと右足だけが気持ち悪いし、実に冷えてくる。
「秋の沢登りの時の方がもっと足が冷えたし、これはずっとマシだ」と言い聞かす。
SHIGEKIさんとTsutomuさんも苦労しつつ徒渉。このあとまだ2回あるのか・・・。
キックステップ開始 ガンバレ〜 「エエ感じの所やなぁ」
雪のついていないヤブと細い木の密集斜面を登ると雪のついた斜面となり、次に灌木帯の
緩い傾斜地となる。「矢問さんの跡を歩くと雪に沈まず楽でええわぁ」とSHIGEKIさん。

9:00
ワカン装着。「今年1月にノロ尾から大御影山に登った時から、道具は早めに使う方針に
変えた」という山日和さん。「道具は使わないともったいないし、僕は体重の点でありがたい」

ややわかりにくい地形地点に着た。経験者の山日和さんと洞吹さんが地形図を確認し進行
ルートを検討。この斜面を越えると次の徒渉地点へ出るという方向への登り開始。
下を見ると沢が流れている。「えっ、これをまた渡るのかいな・・・」とSHIGEKIさん。
景色の下部が第2徒渉点 徒渉する山日和さん
9:15
第二回目の徒渉。みんなはワカンを履いたまま飛び石渡り。
1度目の徒渉で右足の濡れがひびいている僕はワカンをはずして飛び石渡り。
綺麗なブナの疎林帯 「ここも、エエ感じやなぁ」 洞吹さんの後ろは初河山
3m程のヤブ斜面を笹をつかみながら登り、また雪気持ちの良い雪の斜面を登る。
振り返ると、南東方向の初河山がどっしりとした姿を見せてくれた。

10:20
第3徒渉地点。渡りやすい地点で渡ろうということで予定より上部の1250mあたりだ。
徒渉前にしばし休憩。霧雨が雪に変わった。濡れた右足が冷たくて靴下をしぼる。
「あっ、矢問さん、僕のスキー用の靴下を使うてよ。ザックに入ってた」
「ありがとう。うれしい救いの声。まだ徒渉があるし、山頂手前で借して下さいね」
ここの第三徒渉地点の飛び石渡りは、沢幅も狭くて難なく渡れた。
雪は良く締まっている 急な斜面までもうすぐだ 笹藪と残雪の際を慎重に
ここからは徐々に傾斜がきつくなり出す。ワカンを全員はずす。
今日の最も若手であるTsutomuさんが先頭を交代して、斜面を登りピッチを上げる。
後に続く4人はTsutomuさんのハイペースに、息切れで離され気味。
風よけブッシュで休憩 残雪がないとヤブ地獄・・ 一旦ヤブと岩の地点を通過
10:40
斜面途中に西からのきつい風をよけられるブッシュがあり、後続の4人はちょっと休憩。
その時を利用してSHIGEKIさんから靴下を借りて右だけ履き替えた。靴中底が濡れてい
るので、足を入れるとジワッと水がにじみ出るためツライが、ややマシに感じる。

少し先でTsutomuさんが待っていた。ここからはさらに傾斜が急になるという。
アイゼン装着も考えたが、ピッケルとキックステップで行けるだろうという、山日和さん
の判断に従う。しばらくすると傾斜が急になる。Tsutomuさんがトップでステップをきって
くれながらどんどん若いパワーで登っていく。今日はピッケルもアイゼンも持参していない
SHIGEKIさんはラストでみんなのステップを慎重に登ることにした。最後の雪壁の急斜面
地点に来た。直ぐ胸の先で手が届くような傾斜を、山日和さんが先頭でステップを切り、
僕がセカンドでさらにけり込み、後続が続く。「あと一息で山頂」と山日和さんの声がひびく。
これを登り切ると最後の雪壁 「そこが頂上でっか〜」 雪の舞う寒い山頂で記念写真
11:35
願教寺山 山頂。小雪が吹雪いている。長細い感じの山頂だ。みんなで握手。
天気予報が大きくハズレて、楽しみにしていた「奥美濃・大展望」はお預けとなった。
三脚をピッケルで固定して吹雪の中で「撮れてるかどうかは保証無し」の記念写真。
「少し下った所で風がよけられる。そこで食事にしよう」と洞吹案。急な斜面を下る。
風よけ地点へ下山開始 「乾杯〜!」さぁ、ランチタイムだ
10分ほどで、背丈ほどの笹がたてがみのように北風を防いでいる狭い地点に到着。
こんな場所があることも、この山を知り尽くしているお二人のおかげだと強く感じる。

笹の横の木には霧氷がついている。しゃがむと北風を受けない。「行動食で済ますのです
よね」と聞くと「しっかり食事タイムをとりますよ」と山日和さん。昼とお茶の時間をちゃんと
取る山日和さんらしい返答だった。各自ストーブ調理開始。僕はうどんにした。
「あっ、箸忘れた」とTsutomuさん。僕の予備があるので渡した。
「うまいニンニクだし入り具沢山のみそ煮込み汁ができたよ」とSHIGEKIさん。みんなも頂く。
「これで展望があったら言うことなしなのになぁ」「ホンマやなぁ」ほっこりする瞬間だ。

無線機を出してワッチするが、数局の交信がかろうじて了解できるレベルで聞こえるのみ。
食事で暖まったものの、右足が濡れているせいですぐに体の芯まで冷えが来る。「11日
(水)の対中日延長12回引き分けだった甲子園の方がずっと寒かった・・」と言い聞かせる。
TsutomuさんやSHIGEKIさんはまだ食事中なので、キャラメルーマキアートを飲んで温まる。
洞吹さんの尻セード 気持ちの良い尾根下り この景色ともお別れか・・
12:55
昼食地点から下山開始。左からのキツイ風雪が顔に当たる。
ここからの下りの急斜面を見て「こりゃ、ええ斜面やなぁ」「ホントですね」と山スキー好き
のSHIGEKIさん&Tsutomuさんは斜面を眺めてる。
尻セードグッズを取り出し滑っていく山日和さん。「あっ、方向が違う」と右へと修正。
洞吹さんもTsutomuさんも銀マットやレジャーシート敷いて滑り出す。
「この斜面も山スキーには最高やなぁ」「ホントですね〜。スキーにはいい斜面だ」

Ca1405m地点を通る尾根で下山する予定だったが、雪がしっかり残っている1つ西の尾
根を下ることになった。右へ右へとトラバース気味に進み、途中で笹藪を抜けてまた雪原
へと出る。なかなか地形図だけでは難しい地形をしている。
「わさびが多い沢やなぁ」 最後の徒渉で林道へ
あとは灌木の尾根を気持ち良く下ると、朝通ったルートに出るはずだ。
途中の細い沢筋に沢山のわさび。「SHIGEKIさん、わさびや」「ホンマや、多いなぁ」。

13:50
徒渉地点だ。山日和さんと僕が苦労して渡っているうちに、洞吹さんとTsutomuさんは
もっと先の地点で簡単に渡ったようだ。「あちゃ。負けた」と山日和さん。
少し遅れたSHIGEKIさんは僕らと同じ地点を苦労して渡った。
僕らの朝通ったワカンの跡があった。あとはこの足跡通りに戻るのみだ。
ブッシュの壁面を木をつかみ笹をつかんで下る。だんだんとあの徒渉点が近づく・・・。

14:30
地獄の徒渉地点。朝の学習効果で、岩の滑り具合も分かっており大きなミスもなく渡る。
なんということだ・・・青空とともに太陽が顔をのぞかせた。「くっそ〜!!」
フキノトウの多い荒れた林道を歩く。透き通った雪解け水がどんどんと林道を流れる。

15:05
東屋に到着。みんなで握手。
展望こそ期待通りに行かなかった天候だったが、奥美濃の第一級ヤブ山である願教寺山を
山日和さんのおかげで残雪期に山頂を踏むことが出来た。感謝、感謝、満足、満足。

肌がツルツルになる「満天の湯(2年前700円が800円に)」で汗を流し、SHIGEKI号とお別れ。
今日は天気がスッキリせず、「満天の湯」からの素晴らしい展望も今日は今ひとつだ。
山日和号とTsutomu号は大垣ICで下りて、共に食事をしてから帰路についた。
21時半に山日和号の大阪組は集合地に到着。それぞれ帰路へと別れた。

走行しつつ八尾市の局長さんのCQに応答。大阪は暖かかったらしい。大きな違いだ・・。
22時半帰宅し、願教寺山の余韻に浸りながら、ずぶ濡れのザックや道具類を干した。
本日のルート(赤:登りルート 青:下りルート)
この1つ前の記録は「北摂・猪名川を挟む2つの愛宕山」の記録です