沢【芦生】芦生研究林・刑部谷のワチガイソウ分布調査溯行
注:事前に入林申請し、入林許可がいるルートである


【山 域】 芦生/京都大学芦生研究林
【日 時】 2016年4月23日(土)
【メンバー】F氏、矢問 
【コース】 須後~刑部谷出合-右俣-左俣・本流-刑部滝
      ~尾根~コヨモギ小屋跡~須後
 
芦生研究林の許可のもと、今日はFさんが以前の調査データを使ってその変化を調査する。
今日の調査対象種のワチガイソウは個体数が多く広範囲に拡がり、しかも個体は小さい。
京都府のレッドデータブックの京都府カテゴリーでは「絶滅寸前種」とあり、南丹地域の
山地で見つかっているだけとある。高さ10cmの多年草で、地下に肥大した根がある。
葉は対生、長さ1~4cm、上部のものはひし形~卵形、基部は細くなって葉柄となる。
花は小さく白色。茎の下部に閉鎖花を付ける。

夜行バスで東京へ2日間行き、夜行バスで帰宅し、寝不足続き。今日は7時須後に集合で
Fさんのワチガイソウの分布と株数の調査に同行する。
MICKEYこそがこういう小さな花を見つけるのは得意なのだが、ボロボロの沢靴を昨年廃棄し
まだ新調購入できていないことと、今日は家の用事があり同行できない。
   
家を4時半過ぎに出たが、天気予報のとおり園部手前あたりから濃霧で前がよく見えず、
通常のスピードが出せない。ナビでは20分ほど集合時間に遅刻する予測となっている。
かやぶきの里付近から濃霧もややましになり、スピードアップ。なんとか間に合う。
山の家の駐車場には先月3月25日に京都丹波高原国定公園になってからの新しい看板が
出来ていた。

7時前にFさんと合流。「お久しぶりです」雪の頃には調査にご一緒できずじまいだった。
今日の調査許可予定地域の詳細を、前回調査をプロットされた地形図を見ながら伺う。

7:00
刑部谷やカズラ谷、植橋谷など沢筋を3本4本と調べるのは時間的にも少々無理では
ないのかな・・・と思いつつヘルメットと沢靴をザックに入れて長靴で出発。
「僕もロープ持参しましょうか」「今日は要らないと思います」とFさん。

橋を渡るやいなや、植物観察が始まる。4月2日に鹿柵ネットを上げに来たときより
さらに季節は進み、花の開花がどんどん進んでいる。花だったイワナシは実になっていた。
次々にFさんから出る花の名前。「この時期はやはり楽しいですね」とFさん。

直径10センチほどのタラノキがのこぎりで切り倒されてタラの芽を採られている。
「こんなことまでするとは・・・」と憤慨するFさん。本当にひどい・・・。
   
9:15
トロッコ道から刑部谷の出合いまで下りて沢靴に履き替えて調査開始。

僕は右岸、Fさんは左岸を見ていくのだが、ワチガイソウの花は小さくて少し離れると
花も見えづらいし、花が咲いていない株は僕にはとてもとても見つけにくい。
二俣を右俣に入り、標高550m辺りまで調査し、再度二俣へ戻り本流の左俣へ進む。

最初は違う草本と見間違えたが、だんだんと目が慣れてきたのと、株数が増えてきて
見つけやすくなった。カチャカチャとカウンターの数字が増える。
緯度経度を記録するポイントで株数を合算しながらFさんが詳細に記録していく。

その他の草本類もいろいろ観察できるのもこの時期の良いところ。
   
水際だけでなく分岐している枝沢周囲も調べたりするのでなかなか前進しない。
単なる沢登りとは違う。この刑部谷は途中まで来たことはあるが詰めたことはない。

株を数えるために地面ばかり注視しているので通常の沢登りと違い、途中まで沢の
状態を観察しきれていないことに気づいた。
「こりゃいかん、沢の景色を楽しまずに右岸の地面や斜面ばかり見ている・・・」
   
地形図で示された前回調査の地点まで来たが、さらに先まで分布が広がっていた。
「こんなところまで前の調査時に株はなかったのに」とFさん。嬉しい反面、さらに詰めて
いく必要がある。ホールドが乏しいヌメリの強い小滝もいくつもあり、芦生によくある
逆層の登りや岩面に土が乗っているだけで、すぐに「ずるり」と剥がれ落ちてしまうところ
が多々ある。トラバースも巻きもズルズルの斜面が多くて僕には避けたい苦手な部類だ。
   
11:55
突っ張りで登る滝をFさんが慎重に登る。僕は右岸を小さく巻いたが、土が直ぐにめくれたり
崩れたりしてよくすべる。少し巻いて沢筋に下りるにはロープが必要なほど急峻な岩面で、
下からFさんにロープを投げて貰い、木の根にかけて沢床へ下った。
   
   
昼になったのでランチタイム。新緑の美しさ、雨後のコケのみずみずしい色が救いだ。
やはりじっとしているとまだ寒い。

「もう戻るにも時間がかかるところまで来ましたね。まだ株が続いているし、この沢を詰
めてちょっといやらしい刑部滝も登って尾根に登り、コヨモギまで戻るルートにしましょう」
とFさん。

「えっ、この沢を詰めるのですか」今日は沢を途中までの調査だと思い、沢を詰める心構
えが出来ていなかった。沢を詰めきるのは嬉しいが、ズルズル斜面は嫌いなのだが・・・。
まだ小滝や、ズルズルの急峻な登りが待ち構えているのだ。近頃は苦手意識が先に立つ。
     
     
13:45
数段ある刑部滝の右水際を慎重に身の軽いFさんが登っていく。次に土斜面のトラバース。
僕も続いたが、予想通りズルズル岩面土面で体重が持ちそうなホールドが無く、にっちも
さっちも行かず足がミシンをふみかけているとズルっと2mほど腹から滑ってしまい、両手
中指のツメが岩で少しめくれ割れをしてしまった。「イテテテ」中指に力が入れられず、
お助けロープを出して貰ってゴボウで登った。あとは木や根をつかんで登っていく。
     
     
15:00
Ca780mで沢筋を離れ、沢靴から長靴に履き替えて右手斜面を高度差50mほど登り尾根に
登り着いた。小ヨモギまでは長い尾根歩き。
立派なアシウスギや草本類や木本類も観察しながら歩く。
途中にあるタヌキのため糞もFさんは見逃さない。ユズリハの新芽や開葉したばかりの
葉が鹿に食べられているところが目に付く。「実にまずい葉なのにね」とFさん。
   
16:25
コヨモギ小屋跡のカツラ林のところに出た。あとはトロッコ道を1時間ほど戻るのみ。
ここのイチョウの木は雌株と教えて頂いた。雄株は須後なあるという。

事務所前の橋を渡り、民家の奥さんとしばらく歓談。
やはり花の季節がいつもより早いとのこと。植えたわさびなどを盗掘されるという。
 
17:40
山の家の駐車場に到着。「ではまた」と明日も用事があるFさんは先に出発された。
駐車料金を入れて、僕は河鹿荘で汗を流し、いつものかえで御膳と鹿カツを食べて帰路に。
帰路で雨が降り出した。まっ暗な雨の道。園部でタヌキが歩いていた。21時帰宅。
5日間の寝不足続きで帰宅するやいなやバタンキュー・・・。Fさんの体力はやはりすごい。
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
【本日観察できたもの】
アケビ、シャク、オオタチツボスミレ、ハナイカダ、タチツボスミレ、キジムシロ、
ウスギヨウラク、チョウケンゴケ、ユキグニミツバツツジ、ミヤマキケマン、オオカメノキ、
ヌカボシソウ、チャルメルソウ、サワハコベ、ヒカゲツツジ、ノミノフスマ、ウチワゴケ(シダ)、
コウヤコケシノブ、コバノミツバツツジ、コウヤコケシノブ、コケシノブ、タマゴケ、
コセイタカスギゴケ、オオバタネツケバナ、タチネコノメソウ、シハイスミレ、アシウテンナンショウ、
モミジチャルメルソウ、ダイモンジソウ、ワチガイソウ、ニリンソウ、オオカサゴケ、アオダツ、
ヒメアオキ、エンレイソウ、ナカミシシラン、ミヤマカタバミ、タムシバ、ムラサキキケマン、
ミヤマハコベ、アズマヒキガエルのオタマジャクシ 等々
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